「新・黎明俳壇」第3号・税込800円(黎明書房)、「オールカラーで、俳句の楽しさ、面白さを満喫」とあり、特集は「杉田久女VS西東三鬼」。巻頭の「今月の俳句」は、
春の俳句
相合傘の雫や春の鶴揺れて 鳥居真里子
夏の句
我が触れし激しき虹を天へ帰す 橋本多佳子(1899~1963年)
特集の「杉田久女VS西東三鬼」の一句の、「鑑賞は、気鋭の若手俳人8人です。8人にお願いしたことは、杉田久女と西東三鬼の伝記によらずに、杉田久女と西東三鬼の俳句の言葉に即して鑑賞していただくことです。これが、本特集の方針でもあります」とあり、久女と三鬼の句の組み合わせは武馬久仁裕が行っている。その8人とは、山科誠、川嶋ぱんだ、福林弘子、村山恭子、赤野四羽、なつはづき、山本真也、千葉みずほ、である。「豈」同人でもあるなつはづきを例にとると、句は久女「めにつきし毛虫援けずころしやる」と三鬼「ひげを剃り百足虫を殺し外出す」である。その鑑賞文の結びに、
「虫を殺す」という二句だが、久女の句は毛虫に対する「感情が」描かれている事によって句が実景として立ち上がって来る。一方、三鬼の句ではそこに感情を書かないがゆえに暗喩として印象を際立たせる。同じシチュエーションであっても感情の入れ具合によって「実景の力強さ」と「虚構のメッセージ性」とに分かれたのだった。
とある。また、廣島佑亮は、名古屋句会の「グーグルミートでリモート句会」のレポートを書いている。その中のコメントに、
リモート句会の最大のメリットは自宅で参加できることだ。句会場への移動時間、費用を節約でき、遠隔地の人も簡単に参加できる。
今後新型コロナが収束し、対面式の句会が再開しても、リモートは新しい句会形式として、続いていくだろう。
と記している。パソコン画面を「分割して、全員均等に顔を合わせて話し合ったり、発言者をアップしたりするなど、自在にできる。かなりリアルである」ともある。ともあれ、本誌中より、アトランダムになるが句を引用、紹介しておこう。
侘助の花弁の白さ風の声 加納 隆
山茶花の散り敷く赤の孤独かな 稲垣美保子
芋虫の鉄骨のぼるパリの空 前野砥水
木枯らしや時代は姿変へながら 岡本亜蘇
ケリーグラント再会叶わず冬の虹 太田風子
小満のボール追う子と見ている子 鈴木芝風
あきあかね戦の如く飛び交えり 石川幸子(第22回黎明俳壇特選)
長梅雨や雨また雨よ明日も雨 島田和典(同・ユーモア賞)
秋の夜の瞳で開ける金庫室 山科 誠(第23回黎明俳壇特選)
敬老日ひしいものは何もない 杉浦はな子(同・ユーモア賞)
音たてて揚げる天麩羅冬の夜 小畠春美(第24回黎明俳壇特選)
芋掘りで掘ってみればつるばかり 長崎 武(同・ユーモア賞)
人倫に反し真っ赤な牡丹咲く 武馬久仁裕(選者詠)
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