「垂人(たると)」39(編集・発行 中西ひろ美・広瀬ちえみ)、鈴木純一「前句付風句会の顛末」の冒頭に、
中西ひろ美がまた変なことを言い出したぞ。
前句付風(まえくつけふう)句会、やりたい!
「風(ふう)」だから、本式じゃなく、気楽に、ってことだな。
だったら付き合ってやるか。でも「前句付」って何?
調べてみた――
「前句付」は、川柳の母体である
待てよ、もしあなたが俳人なら、
じゃあ 「俳句」と関係ないな
と、読み飛ばすかもしれない。それは困る。
もし俳人でなく、川柳人なら、
そんなんで「川柳」は語れないよ
とムカつくかも。それも困る。
中西本人は、こう言うにちがいない。
私がやりたいのは「俳諧」。俳句でも川柳でもない
困った―― 波風立(たて)ず今に貧乏(武玉川)
「前句付」はもともと俳諧連歌の練習(トレーニング)だったらしい。
だから、前句付を知るには連歌を知らなけれなならないが、その連歌を知るためには和歌(うた)を知らなくてはいけない。
面倒なことになった。
和歌はメール、ライン、カラオケ、テニスみたいだ。つまり、贈与・交換・遊戯・戦争にすごく似ている。恋と恨み、出会いと別れ、挨拶と皮肉、秋波に微笑。 (中略)
たとえば、誰でも知ってる句、
盗人を捕らえて見れば我が子なり
これ、今まで「川柳」だと思っていたが、実は「前句付」。『新撰犬筑波集』に載っているというから室町後期、十六世紀の話。そのころ柄井川柳はまだ生まれていない。だから〈盗人を〉の句は、「川柳」じゃなくて「前句付」。先に前句〈切りたくもあり切りたくもなし〉を出して、後で〈ぬす人をとらへてみればわが子なり〉を付ける。慶長二年(1597)に長宗我部元親が定めた百箇条には、「妻に姦通があった場合、夫が姦婦を殺害しなければ、本人・妻・姦夫の全て死罪」というのがあるそうだ。斬るか、斬らぬか。盗まれたのが金であったことを願う。(中略)
かくて始まる「前句付風句会」――
物好き八人、お題が二つ。その一つ目はこうだ。
(一)ちろりの最期逆さまにつぐ
これ、『武玉川』にある付句だという。
『武玉川』は前句付の撰集なのに前句を載せていない。同じ付句集でも十五年後の『柳多留」は載せている。(中略)
ちろりの最期逆さまにつぐ
明日からの空気が見えぬ無礼講 雀羅 (以下略)
このあと、一句ごとに、鈴木純一の懇切、克明な解説、鑑賞文が付く。ともあれ、本号より、通常作品から、いくつかを以下に引用していきたい。
いくらでも塩対応をいたします 広瀬ちえみ
山眠る飛行機雲の尾が残り 川村研治
草の絮どこへ向かって応援歌 中西ひろ美
時雨るるや芝神明の裏の道 渡辺信明
明日のわが町わがまま核のゴミ 中内火星
ばんざいの冬木もぬけの浮力あり ますだかも
わくらばとなるまで願わくばわくわく 高橋かづき
なんとなくいいねを押して考えるはたして押してよかったのだろうか 野口 裕
撮影・芽夢野うのき「青空はくるぶしにきて花辛夷」↑
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