第22回「ことごと句会」(2021年2月10日)、通称「切手句会」。雑詠3句+兼題「水」。らふ亜沙弥初参加で、少し賑やかになった。ともあれ、一人一句を以下に挙げておきたい。
春水の息吹にふれる櫂の音 渡邉樹音
晩節にいま泳ぎ出す春の海 武藤 幹
薄紅梅そろそろ私泣きますよ らふ亜沙弥
警策(けいさく)に叩かれのちの梅蕾 照井三余
静止画の微かに変わる水の色 渡辺信子
おおいぬのふぐりはちいさいなあ春 金田一剛
水音もシンコペーションして春に 江良純雄
水性(すいしょう)の女うつくし春の暮 大井恒行
以下に一口評を上げておこう。
・「寒茜・・」―作者の寒茜への思い入れ!正にエンドロールにふさわしい(幹)。
・「春水の・・」-春水に躍動感を与え、動画を演出(純雄)。
・「晩節に・・」-最近自分も晩節、晩年を考える時がある。「いま泳ぎ出す春の海」に終わりではなく、生きるエネルギーを感じます(樹音)。
・「薄紅梅・・」-先日、梅が丘に観梅に行きました。家人は、きんきんの紅梅よりも、薄い紅梅が好きですと(剛)。
・「警策に・・」-森閑とした空気の流れと清らかさ(樹音)。
・「静止画の・・」-静止画にさえ、かすかに変化する色合いを見逃さなかった。無季なので、下五を「水の春」とでもすれば、句はもっと良くなったと思う(恒行)。
・「おおいぬのふぐり・・」ーもう本当に素直な心情の句。・・・春の季語を頭に「春」を着地に。これ迄の句会では大先輩がダメ出しをするところですが、「春」には心奪われました(亜沙弥)。
・「水音も・・」-水の音も三寒四温とともに、そのリズムで春を呼び、運んでくる(恒行)。
・「水性(すいしょう)の・・」-まさに水もしたたるいい女。「水性」のルビは、「すいせい」でも良いような。男性、女性、水性…(信子)。
★閑話休題・・・西東三鬼「兵隊が征くまつ黒い汽車に乗り」(「図書新聞」3847号・2021年3月13日より)・・・
先ごろなくなった高橋龍氏は、新興俳句の大先輩であり、私と少し歴史の見方が違うところはあったが、「わたくしが死蔵しているよりも戦時下の俳句の研究をなされておられる大兄の手許にあるほうが資料価値が生じると思いますので」と様々な資料をご恵贈いただいた。(中略)
頂いた資料の中には日本文学報告会編『俳句年鑑』(桃蹊書房刊)があった。日本文学報告会編が珍しいだけでなく、全俳壇を網羅した日本で初めての「俳句年鑑」ということになる。三五八頁の大冊は、「昭和十七年俳句界観」「作品」(自選五句)「記事目録(雑誌けいさいの研究・評論一覧)「書目解題」「作者略伝」「主宰雑誌」「日本文学報告会紀要」からなり、今日の俳句年鑑とほとんど異ならない。(中略)
戦後になると、この『俳句年鑑』の出版元桃蹊書房は、新発足した現代俳句協会の機関誌「俳句芸術」第一号(昭和二十三年七月)・第二号(同十二月)を刊行している。これも高橋氏から頂いたものであるが、報国会から現代俳句協会へ、出版社のその変わり身に早さに啞然とする。
とあった。思えば高橋龍は、彼の生きてきた時代の俳句の生き字引き、生き証人のような俳人だった。そういう俳人はもう皆鬼籍に入られてしまった。
落つる日の方へ消えゆく葱の畝 高橋 龍 (昭43)
六月を歩き出す山みまかる山 〃 (昭44)
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