「句歌」第十集(発行 保坂成夫)。宮入聖の「浮子ひとつ」(句集『暗い絵・草の罠』1992・未刊より)と「一夏不會」(句集『定本 家霊』昭和48年・未刊)の句がそれぞれ登載されている。「作者付記」には、
本集『定本 夏霊』は昭和四十八年夏の間に書かれた436句全句をほぼ原句のまま収録し定本とした。同年、俳句研究社主催第一回五十句競作応募作「夏霊」50句はこのなかから選んでいる。
なお、別に『長岡裕一郎筆写 宮入聖一夏一會』(冬青社)がある。
とある。本誌にはもう一人、小海四夏夫とおぼしき保坂成夫の「窮乏ブログ/1月6日~2月26日」と短歌・保坂成夫「ベランダの風」26首が掲載されている。「窮乏ブログ」の日録はとびとびだが、短めのものと句と歌を以下に紹介しておきたい。
一月六日 網走湖でワカサギ釣り。いいな、いいなあ。遥か、遥か彼方にゃオホーツク。燃えるこの身は北の果て。
一月九日 一般的にチェーンソーを使用するなら講習を受けるか、経験豊かな林業家に習うべきと考えられる。
斧を使った薪割りの消費カロリーは444キロカロリー。テレビ鑑賞は74キロカロリー。雪かきは481キロカロリー。(ラーシュ・ミッテング著「薪を炊く」より)
一月十六日 ウイルスに打ち勝ったり、消去することは出来ません。それは無益な闘いです。長い進化の過程で、遺伝する情報は親から子へ垂直方向にしか伝わらないが、ウイルスは遺伝子を水平方向に運ぶという有用性があるからこそ、今も存在している。その中の一部が病気をもたらすわけで、長い目で見ると、人間に免疫を与えてきました。ウイルスとは共に進化しあう関係にあるのです。(福岡伸一)
二月十五日 中国の広州に十万人規模のリトルアフリカがあるそうだ。昨年の春頃から彼らがウイルスを持ち込んだのではないかという情報が飛び交い、アフリカ系は酷い目にあったらしい。いまもその後遺症のなかにあるという。
カードホルダーに遺書を忍ばせ十四歳の少女はデモに出で行きたるを 成夫
畳店の跡地にコインランドリーが建ちて回るよ時代は回る
「桜桃の実れる頃」を聞きながらセルフネグレクトする昨日今日
不要不急の外出は控へ長雨の八月は読み書き算盤
「一握りの勝者と圧倒的多数の敗者のカーニバル」ならつい先だっての・・・
駅でなく水引草のところです 聖『暗い絵・草の罠』より
くらいくらい絵であった水蜜桃二つ
ゆきゆきて伏字伏字の夏野原
帰省子へだれがさいしょにおどろくか
うめよふやせよ国民的月見草
日を抱いて合歓まどろみの息すなり 聖『定本 家霊』より
夏柳かくれごころの昼の道
銀漢に地の蟲むせびわたるなり
夢しぼむばかりといひて蟻つぶす
蛍見の闇をへだてる水喧嘩
撮影・中西ひろ美「この世にて笑う茸となりにけり」↑
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