第28回「ことごと句会」(8月20日付け切手句会)、兼題は「糧・糅」+雑詠3句。以下に一人一句と短評を抄出しておこう。
八月の閨しらじらと土踏まず 渡邉樹音
糧を捨て船を沈める時か今 渡辺信子
痛みがとれぬまま蛸になる らふ亜沙弥
この夏は閏(うるう)八月やもしれぬ 金田一剛
種牛のごとき肩持ち夏を嗤う 照井三余
どっととどうどっととどうと天の川 江良純雄
晩夏光糅飯知らぬ子のままに 武藤 幹
敗戦日白馬の糧秣だったかも知れぬ 大井恒行
★「糧なるは・・」ー「言葉少し」の斡旋が効いている。下五「いわし雲」との取り合わせには、楸邨の「鰯雲人に告ぐべきことならず」が本歌として脳裏に浮かんでくる(恒行)。ー「心ある人の言葉」と「悠々たる自然」。まさに今の心の糧(信子)。
★「八月の・・」ーたぶん、熱帯夜で眠られず、土踏まずの生気の無さに臨場感(純雄)。
★「糧をすて・・」ー「現役」引退の決意位なら穏やかだが、「人生」自体なら早まるな!(幹)。
★「痛みがとれぬ・・」ーこれが俳句か!?だが魅力あり!エロチック!!(幹)。
★「この夏は・・」ー今年の夏(八月)は、どうも普段どおりではない様だ!(幹)
★「種牛の・・」ー夏を嗤う男が気持ち悪い(亜沙弥)。
★「どっとと・・」ーあのどっとか、このどっとかわからないが面白い。季語は無数にありそうだ(亜沙弥)。
★「晩夏光・・」ー幸せ者というべきk・・・(恒行)。
★「敗戦日・・」ー敗戦はわが国に白馬が喰む牧草だったかも・・・(三余)。
☆ちなみに、「アルコール消毒が好き九月蠅」(剛)の自句自解には、「近所のスーパーマーケットに入るときも出るときも、消毒消毒とうるさい家人。九月の蠅もうるさい。蠅が手をする足をする‥一茶翁ならんとする」とあった。
★閑話休題・・西山喜雄「つらくとも言ふ・聞く・誓ふ原爆忌」(第52回原爆忌東京俳句大会・大井恒行特選句)・・
「第52回原爆忌東京俳句大会作品集」(主催 原爆忌東京俳句大会実行委員会)には、「(前略)本来なら8月28日に予定した会場にて、授賞式を行うはずでしたが、コロナ禍による非常事態宣言のつづく中、昨年につづき会場での開催を断念せざるを得ませんでした。(中略)『核兵器禁止条約』の真の実現をめざして、微力を尽くして参る所存ですので、今後ともお力添えのほど、よろしくお願い申し上げます」とあった。以下に大会賞の作品を紹介しておこう。
かの世ともこの世とも八月の川 神奈川県・西川肇子(東京都知事賞)
駅ピアノに影来て坐るヒロシマ忌 山形県・工藤博司(現代俳句協会賞)
八月六日の私の影を返しなさい 山形県・工藤博司(第五福竜丸平和協会賞)
八月の水流れゆく爆心地 茨城県・小松崎黎子(東友会賞)
原爆ドーム見上げ日傘の動かざる 徳島県・加治道子(東京新聞賞)
原爆忌死者が生者をいたはりて 愛知県・稲垣 長(口語俳句振興会賞)
影たちがひとり歩きす原爆忌 北海道・春 一郎(平和を愛する俳人懇話会賞)
冷房の効き過ぎている原爆展 愛知県・渡邊淳子(全国俳誌協会賞)
吐きそうなほどの青空ひろしま忌 愛知県・三浦二三子(新俳句人連盟賞)
撮影・鈴木純一「残りもの集めて七草として出す」↑
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