2016年7月22日金曜日

高橋 龍「夏山の引つかき傷を敏雄搔く」(『小橡川』)・・・



不及齋叢書・拾「高橋龍句控『小橡川』(高橋人形舎)」の発行日は、2016年7月8日、7月8日は
言わずとしれた蟬翁・高柳重信の忌日である。早いもので没後33年。
記された「書名解題」によると、

 小橡川は、奈良県吉野郡北山村を、北から南へ流れ河合という村役場のある集落のあたりで、北山川に合流する川である。
 わたしがこの地を訪れたのは、平成十三年(2001)七月末の猛暑のつづく日であった。(中略)わたしがなぜこんな吉野の山奥に関心をもったのか。実は以前に谷崎潤一郎の「吉野葛」。近年には花田清輝の「『吉野葛』注」、「開かずの箱」、「力婦伝」(『室町小説集』所収)や瀧川政次郎監修『後南朝史論集』を読んだからである。バスの乗り継ぎ場所としてばかりではなく、川上村にもたずねる所があった。(中略)長禄元年(1457)十二月二日、いわゆる嘉吉の乱(1441)で六代将軍足利義教を謀殺して取潰された赤松氏の遺臣らが、この地に潜んでいた南朝の皇胤、一宮(北山宮)・二宮(河野宮)兄弟を討取った。その二宮(河野宮)の墳墓がこの村にあるのである。

「あとがき」には、

奇しくも、今年は一宮(北山宮)・二宮(河野宮)が弑されて五百六十年に当たる。多少の感慨なきを得ない。「後南朝史」とは中世における神話なのではあるまいか。

と記されている。高橋龍とかかわりのあった忌日句と、他のいくつかの旦那芸?的句を以下にあげておこう。

          郁乎忌に
       ほととぎす芭蕉に勝る其角かな
       敏雄ほどには見えぬはるかや夏霞
          句控「擬檀林」訂正
       『野』に野分間庭とよ子の逝きし夜に
          追補
       人見絹枝と走りし澤村和子の忌
          ヴァグナーと高柳重信
       共に泳ぐ/船長に/海/死を許さず
       阿部鬼九男しのぶ集ひの小米花      
     

       尼寺の居着く鴉も春の鳥
       六月の雨は天から降つてくる
                BOOK・OFF戦争文庫『安倍一族』
       聖母(しょうも)ない女と嘆く青葉木菟
       変り玉変りつくせる春の色

       虚子超える兜太見上ぐる鳥雲に
       二十歳その振り仮名やあすはしぬ





                 ヘクソカズラ↑

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