2016年7月7日木曜日

大牧広「立飲みの靴靴靴や東京・夏」(『地平』)・・・



大牧広第9句集『地平』(角川書店)。句集名は、

   やがて雪されど俳句は地平持つ

の句による。地平とはいかなる地平か。不明なればこそのめざすべき地平があるのである。

  着ぶくれて人も自分も許さざり

なのである。多くのものに、多くの人への挨拶に満ちている句ばかりだ。自在と言えば自在、世の中の動向に怒りをあらわにするのもその在り様の一面である。

  にんげんのかくも傲りて吊鮟鱇
  語り部のせめての紅や原爆忌
  敗戦忌三橋敏雄詫びて逝く
  平成の欠食児童日本の冬

これら、あれらを生み出すもとに「八十五歳のとしよりのエネルギーの結果を読んで下されば、こんなにありがたいことはない」(あとがき)と言う。そしてまた、

  極道と句道と似たるはるがすみ
  
金子兜太の後ろを歩いて、遜色ない大牧広の、ますますの健康と健吟を祈る。
泣かせる句も、

  はこべらや厨は母の泣きし場所
  死期近き姉の声なり麦の秋
  新茶汲む妻との刻は現世のとき
  花種を苛むごとく蒔かざりし
  わが脳がこんなに疲れちんちろりん
  糸ながながと蓑虫の敗北感
  


                 シモツケ↑



 

0 件のコメント:

コメントを投稿