2018年5月28日月曜日

三宅桃子「ごきぶり叩く芯のない筒つくり」(「豆の木」NO.22)・・・



 「豆の木」第22号、第23回20句競作「豆の木賞」に選ばれたのが三宅桃子。略歴に1983年生れ。22歳のとき、母・三宅やよいの紹介で、こしのゆみこの「土やき研究会」で陶芸を始め、俳句は「豆の木」がきっかけで、30歳から作句を開始したとある。2016年には「陸」に入会とあって、母子俳人である。互選評には、万遍なく評価点を得ているようで、宮本佳世乃は、

  客観的にカラッと日常を描いている。言葉に負担をかけていないところが良い。

といい、こしのゆみこは、

 ただごとすぎると思える句もあるのが残念だが、ひょうようとしてとぼけた味わいがおもしろい。肩の力が抜ける感じ。「夕焼くる犬を一匹洗い終え」「渡り鳥が焼きついている家族写真」「ひぐらしを壊さぬようにスープのむ」

と評している。その他、同人の月野ぽぽなの第63回角川俳句賞「人のかたち」評を鴇田智哉、第35回現代俳句新人賞「ぽつねんと」宮本佳世乃評を小津夜景、そのほか、「海程」系同人誌らしく「金子兜太先生と私」の追悼エッセイなどけっこう読み応えがある。中でも力作は片岡秀樹「言霊と戦争」巻の壱「中世・近世編」、連歌・俳諧における戦とのかかわりをよく調べよく書いている。こしのゆみこの海外「旅のノート」⑲は歩数が記されているのが面白い。よく歩いている。愚生にとっては少し羨ましい人生の過ごし方。
ともあれ、一人一句を以下に挙げておこう。

   きさらぎや櫛で梳かれた影を引き    三宅桃子
   なんでも食べるみづうみも山も霧   宮本佳世乃
   赤ん坊の酸っぱい指よ夏つばめ     室田洋子
   音楽は水でありけり春来る     矢羽野智津子
   ひとりづつ霞む小学生の花壇      山岸由佳
   飛魚を炙つて梟カフェにゐる      吉田悦花 
   待春の静脈は青髪を切る        吉野秀彦
   高圧をかけた炭素が売れる冬      石山昼桜
   人造人間ノリコの茶摘プログラム    上野葉月
   肘に蟻あつまつてゐる根釈迦かな    大石雄鬼
   春の月より下ろしたる梯子かな    太田うさぎ
   モノポリー蜆が砂を吐く間       岡田由季
   三姉妹めいて総務課竹の春       小野裕三
   正座から嘘の転がる冬日向       柏柳明子
   標的になる為座る冬の椅子       片岡秀樹
   きっとという言葉リボン柳絮飛ぶ   川田由美子
   アパシーの縁より崩れかき氷      楠本奇蹄
   手袋のかたち置手紙のかたち    こしのゆみこ
   本日の噴水はもう終りです       近 恵
   あたらしき有刺鉄線水の秋      齋藤朝比古
   造船所の奥に火花や海月浮く     嵯峨根鈴子
   綾瀬はるか似といへども雪女    しまいちろう
   晩秋や歌になれない水たまり      鈴木健司
   いつからか鸚鵡ボートは濡れてゐる   高橋洋子
   男女なく龍に呑まれし桃の国      田島健一
   万緑や軽い軋みとしてわたし     月野ぽぽな
   人間を消したがる街冴え返る      峠谷清広
   長い通(みち)のりだった梅咲いている 中内火星
   ファルセット・ヴォイス流氷呼び寄せる 中嶋憲武
   戀といふ名の旅をしてゐたと言へ   三島ゆかり




★閑話休題・・・
     
 無念ながら、かつて「豈」同人、現在「夢座」同人の佐藤榮市氏の訃報がもたらされた。
23日に死去。密葬にて27日告別。享年69は愚生と同齢。

   大兄の訃を聞く今朝の走り梅雨    恒行

ご冥福を祈る。合掌。


        

  

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