2019年2月13日水曜日

角谷昌子「まどろみのままに貰はれゆく仔猫」(「あだち野」2018年アンソロジーより)・・



 2018年アンソロジー「あだち野」(あだち俳句会)、表紙裏に「客観写生の確立をめざす」と掲げられている。巻頭随筆には、角谷昌子「猫と俳句と私」、金子敦「『絵葉書』と『福笑い』」、林誠司「庶民の詩」の寄稿がある。その角谷昌子のエッセイの中に、一時は「十匹以上の猫まみれの生活」だったとあり、

 猫との暮しは二十年以上になる。いまではとうとう最初の猫の孫ともう一匹だけになってしまった。
 いつも傍にいて、心を傾ければ応えてくれる猫は、俳句と同じだ。猫と俳句のおかげで生きる力を得たし、日常生活が豊かになった。猫の視線で自然を見渡すと、それぞれのいのちがぐっと身近になる。

 という。ブログタイトルに挙げた「貰はれゆく仔猫」は、角谷家から「里子に出される猫を見守ったときの句」だと記してあった。ともあれ、同誌から一人一句を挙げておこう。

  小児科の待合室の金魚玉      一枝 伸
  少年の不思議な力青嵐       松木靖夫
  水の面を蠢く蝌蚪の黒だまり   水本ひろ人
  雨音を覆ひ隠して未草       西川政春
  荒海へ吹きもどさるる波の花    村井栄子
  空蝉の乾ききつたる力かな     河合信子 
  銀閣寺で眺めし月も今日の月    二瓶里子
  短夜や兵隊還るおもちゃ箱     菅沼里江
  人気なき家の片隅草雲雀     小松トミ子
  誘はれてゐる食事会春浅し    尾形けい子
  スタンプの滲む宅配春の闇    天野みつ子
  閼伽桶にさし入る春日母の声   石田むつき
  シスターの手荷物ふたつ春コート  澁谷 遥
  地下鉄を出て木枯に吹かれけり   伊藤弘子
  模擬テスト窓より外は虫時雨    竹内祥子
  下駄の歯にかみつく雪を叩きけり 岡田みさ子
  丸き背を反ればくすぐる春の風  越川てる子
  猛暑日や思ひ切り割る貯金箱   田ケ谷房子
  急流に水草の花湛へけり      國井京子
  園庭のドームの屋根と木漏れ日と  三浦恒子
  木登りの先は青空樟若葉     矢作十志夫
  酉の市路地の置屋に灯がともり  田ケ谷やすじ
  一夜にて積もる一枝綿帽子   五十君與志子
  山並は入道雲を上に乗せ      渡辺 徹
  雪解けの山ことごとく迸る     田口 修
  春霞空のいちぶにスカイツリー  佐藤やよい
  自転車の籠の中から千住葱    吉村すみえ
  ひとときの色鮮やかな柘榴かな   水tに義江
  豊の秋生あるものの淫らなる    高野敏男
   



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