2019年10月22日火曜日

中谷みさを「ゆき止まりのないこの道息深く吸う」(「句抄覚え書き/自由律俳句 周防一夜会」)・・



「句抄覚え書き抄 その三十六」(令和元年 2019秋 自由律俳句 周防一夜会)、巻頭の辞は、T.Sエリオット「伝統と個人の才能」が久光良一よって引用されている。それには、

 (前略)詩人の仕事は、新しい情緒を見出すことではなく。普通の情緒を用いながら、それを詩に作りあげてゆく際に、現実の情緒にはけっして存在しないような感触を表現することなのである。

 と、ある。本集は毎年発行され、自由律俳句の灯を絶やすことない志を堅持している。各人の作品とエッセイでシンプルにまとめられている冊子である。ともあれ、一人一句を挙げておこう。

  年とったとも思わず新しい年重ねてゆく   中谷みさを
  夕焼のベンチに終った恋がすわっている    久光良一
  幼き声も聞こえる嬉しいお正月        甲斐信子
  ご自由に耳あててくださいとあり貝の中の海  加治紀子
  梅雨入り ポツポツと雨粒かわいた葉を滑る 村上ミチヱ
  赤陽に煩悩投げうち燃えよと叫ぶ       吉川窓心
  風吹いて田布施川下る花いかだ        久光時子
  風につまづく老いの足            山口綾子
  心許した人の無言の別れ 山茶花散る     小藤淳子
  水たまり飛ぶのをやめて遠回りする      石田帝児
  裸木の枝先に光が春を結んでいく      藤井千恵子
  あの角を曲がってあなたは来ない烈日     吉村勝義
  うわのそらで聞き流した後悔        小村みつ枝
  目標なき目的自分を動かす御朱印が      山本哲正
  竹と潅木 切っては焼き切っては焼く    國本英智郎


1 件のコメント:

  1.   年とったとも思わず新しい年重ねてゆく   中谷みさを
    懐かしいなーみさをさん 田布施には40年前に行ったが・・・

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