2020年2月26日水曜日

中内亮玄「月は差延どこまで俺から消そうか」(「俳諧旅団 月鳴」創刊号)・・



 「俳諧旅団 月鳴」創刊号(狐尽出版)、献辞がある。

  もし主体に依存して写生するのは
  むしろ寄る辺ない現象にすぎぬ私自身を
  徹底して懐疑する故である

  日常に旅し
  五七五の器に言葉を注ぎ
  鮮やかな映像を浮かび上がらせ
  あなたと
  このささやかな世界を
  わずかな時間を
  共有できたらいい

  よりよく、生きよう

                 俳諧旅団長 月鳴会主宰 中内亮玄

  多くの人たちの祝辞に送られての船出である。

  
   師を思うひとつに厚きてのひら忌      中内亮玄
    てのひら忌(てのひらき)・・作者が、師である金子兜太を偲んだ言葉

 ともあれ、「俳諧旅団長級俳人」と称された方々の一人一句を以下に挙げておこう。

  神の息花野明りをふと消しぬ         猪狩鳳保
  誕生日を明日に七夕竹ざわざわざわ      植田郁一
  何よりも御身大切更衣           塩谷美津子
  移民法可決鮟鱇鍋沸騰           ナカムラ薫
  コート脱ぐそのまま涅槃までの距離      林 和清



★閑話休題・・須藤徹「めめんともり逆白波が陽を掠め」(「こだま」令和2年1月号より)・・・

松林尚志「山茶庵消息」の「『須藤徹全句集』に触れて」に以下のようにあった。

  (前略)なお古いことになってしまったが、須藤氏と私の出会いに触れておきたい。平成九年、現代俳句協会が創立五十周年を迎え、記念特大号が出ている。編集長橋爪鶴麿氏の案でこの号のために「二十一世紀の俳句を考える」の座談会がもたれた。この座談会は私の司会で、安西篤氏、須藤徹氏、大井恒行氏の四人で行われた。須藤氏に期待するところが大きかったのである。

  春雷にランボー読む手ふるへけり   『宙の家』
  聖ジュネの遠き断崖つちふれる    『幻奏録』
  天の川シュペルヴィエルの唇は鳥   『荒野抄』
  めめんともり逆白波が陽を掠め 「ぶるうまりん」 

 愚生は、すっかり忘れていたのだが、あれは現俳協50周年記念号であったのか・・・(20年以上前のことだ)。ともあれ、「こだま俳句集」から以下に一人一句を挙げておこう。

  寒満月無言貫き中天に         松林尚志
  埋み火に突っ伏せし刃は五十越せず   勝原士郎
  初釜や手前茶を点て渇を癒す      小島俊明
  孫帰りカルタ一枚コタツ中       石井廣志
  湯に浮きし柚子われに触れ恥らひし   阿部晶子
  飛ぶやうに駆け抜けるニュース竜の玉 山田ひかる 
  侘び助やひととき茶腹間借り生     奥村尚美
  
   

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