「オルガン」27号(編集 宮本佳代乃・発行 鴇田智哉)、座談会は「自由だけど」のゲストは文筆家・イラストレーター金井真紀。その中から、恣意的になるが、以下に引用しよう。
〇試行錯誤しながら
田島 実を言うと、僕の俳句の作り方はかなり変わっていて。最初、どこかからテキストを持ってくるの。お気に入りサイトから記事をコピペして、てにをはとか句読点とかを全部消すの。言葉のぶつ切りにしたものを、3キーワードずつくらいにして、それを見ながら季語を当て込んでいく。
金井 何それ、やってみたい。
田島 あとは自分の興味本位で面白くなるかならないかで勝負したりして。
金井 いつそのやり方を発明したんですか。
田島 この方法まだ、完成してないんです。(笑)。
全員 (笑)。 (中略)
田島 それで作ったのが〈意味するマダガスカル変な木変な虹〉の句。いろんな人から全くわからないって笑われる(笑)。
全員 (笑)。
宮本 鴇田さんは走った直後に作っていましたよね。
鴇田 走って頭がぼうっとした直後に句を書き留めて。
金井 どんなのができたんですか?
鴇田 〈ぱたる目の6は一気にしらべたい〉とか、そういうやつです。
金井 はあぁー(笑い)、えっそれが降ってくるの?すごくないですか?(中略)
福田 いや、僕はそういうの絶対にやらない(笑)。言葉が先に走るのを割と嫌いますね。書き手として、自分のうわごとが信用できないんです。(中略)それよりは、言いたいことがうまく言えない。書きたいことがうまく書けない、そういうところの葛藤に、自分の本領がある気がしています。
そして、また、「〇自分が好きだと思える絵を描こう』って」、の小見出しの部分に、
金井 つまりプロになりきれていない。だから「うまい絵を描こう」じゃなくて、「自分が好きだと思える絵を描こう」って決めてます。絵が上手い人は百万人いるから、そっちを目指してもだめだなって。俳句なんかもう完全に素人ですから、やっぱりうまい句を作ろうと思わず、自分が好きな句を作ろうって思う。(中略)
〇「面白く暴れてやろう」と
宮本 話は変わるんですけど、最近、戦争に関する文章を多く書いていますよね。
金井 そうですね。もともと近現代史が好きで。でも戦争の話は自分も含め、みんなどんどん忘れていってしまう。そのうえ歴史修正主義者の悪いやつが「なかったこと」にしてしまう。それはダメだと。一方で、最近「面白く暴れてやろう」という気持ちが湧いてきたんです。ただ暴れるだけでもいいんだけど、面白く暴れるのがいいなと。だからのんきな文章や笑える絵で、悪いやつに対抗してやろうと。ささやかに。
宮本 自分の思いを伝える方法として?
金井 戦争の話を聞いちゃったからには伝えなきゃって、その程度のことなんですけど。(中略)
〇政治もラーメンも
金井 このあいだ本屋さんで、イギリスの姉妹が書いた『プロテストってなに?世界を変えたさまざまな社会運動』(アリス&エミリーㇵワース=ブース)という絵本を見つけて即買いました。木に抱きついて森林伐採に反対する運動とか、独裁者の演説にわざと拍手喝采しておちょくるだとか、古今東西の面白く暴れた事例がてんこ盛りのすばらしい本。で、わたしはこの系譜のなかに渡邉白泉を入れてもいいんじゃないかと思ったんです。〈憲兵の前で滑つて転んぢやつた〉なんて、命がけで笑える俳句を作ったわけですよね。
鴇田 俳句じゃないけど、忌野清志郎の「原発賛成音頭」があったよね。
金井 そういうこと!
鴇田 歌詞は、原発は安全でサイコーだっていう内容で、あれって痛快ですよね。平成の俳句では高山れおなの〈げんぱつ は おとな の あそび ぜんゑい も〉とか。
金井 俳句の人って面白がるのが得意ですよね。生々しくは言わない。だけど反骨。俳句の人特有の伝え方が何かあると思うんです。(以下略)
ともあれ、以下に同号より一人一句を挙げておこう。
かなしいような旨い戻り鰹だったな 福田若之
うすい血液冬眠の眼になる 宮本佳代乃
追放会議ふくろうが声つかい切る 田島健一
住んでゐる人の出てくる冬の朝 鴇田智哉
撮影・中西ひろ美「降ってやみまた降りたがる今日の雪」↑
0 件のコメント:
コメントを投稿