昨夜は、帝国ホテルで行なわれた第56回読売文学賞授賞式に出かけた。
「今日は俳人が多いねぇ」、誰かが呟いた。
まあ、3.11以後の寵児のような扱いをうけ、かつ、現俳壇で人気絶頂の高野ムツオとあっては、例年にない俳人の多さだったのだろう(授賞式に初めて出席した愚生には実はわからない)。
昨年の俳人の受賞は和田悟朗(愚生は二次会からの参加だった)。今年も90歳を越える年齢にも関わらず元気に奈良から駆けつけられていた。
しばし、愚生が二十歳の頃、投句していた兜子時代の「渦」の話を少しした。
兜子急逝のあと、しばらくして主宰を継承した赤尾恵以を支えた一人が和田悟朗だ。
ともかく、以下に、受賞作・受賞者を記す。
〇小説賞 村田喜代子「ゆうじょこう」(新潮社)
〇随筆・寄稿賞 旦 敬介 「旅立つ理由」(岩波書店)
栩木伸明 「アイルランドモノ語り」(みすず書房)
○評伝・伝記賞 小笠原豊樹 「マヤコフスキー事件」(河出書房新社)
(不明にして小笠原豊樹が詩人の岩田宏であるということを初めて知った)
○詩歌俳句賞 高野ムツオ 句集「萬の翅」(角川学芸出版)
○研究・翻訳賞 中務哲郎・訳「ヘシオドス 全作品」(京都大学出版会)
選考評は全選考委員を代表して、全部門の選評を高橋睦郎が見事な分析力を発揮して披露した。
受賞の言葉では、高野ムツオが「俳句は僕にとって出来の悪い子どものようなもので、死ぬまで付き合っていければよい」と述べたのが印象深かった。
句集『萬の翅』は、今.愚生の知人に貸しているので手元にないので、具体的に指摘できないのが残念だが、評判の良かった震災詠もさることながら、むしろ11年間の句の秀逸さはそれ以上という印象であった。佐藤鬼房、桂信子などへの追悼の句、田中哲也の名もあったと思うが、それらの句、そして自らの咽頭癌手術の際の句など、彼の境涯が俳句の表現力を熟成させていたことは確かなことで、目を瞠っていたのだ。
霜柱この世の他にこの世なし ムツオ
因みに読売文学賞で東北人が受賞するのは高野ムツオが初めて、九州は村田喜代子で伊藤一彦に次いで二人目という。期せずして蝦夷・熊襲の合体?だった。
祝賀会では、多くの俳人に会ったが、それ以上に懐かしくもしばらくぶりにお会いしたのが五柳書院の小川泰彦(愚生の俳句入門書、西東社から出た『俳句 作る楽しむ発表する』の切っ掛けを与えてくれた人である)。また、愚生の単独句集はすべて出してくれている書肆山田・鈴木一民、そして、彼の紹介で書肆山田から詩集『アトランティスは水くさい』を出している平田俊子などなど。愚生は二次会を失礼したが、結局、数年ぶりの有楽町・炉端に鈴木一民と近代文学館事務局の若き有望と思われる吉原洋一とで、彼らは酒を呑み、全く呑めなくなった愚生はお茶を出してもらって遅くまで歓談。
それと大場鬼奴多(関口で野菜倶楽部・OTO NO HA CAFEをやっているので、是非訪ねて来いと・・言う)にも眞鍋呉夫を偲ぶ会以来の再会だった。
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