2015年5月21日木曜日

横山白虹「ニコよ!青い木賊をまだ採るのか」・・・



寺井谷子の著書が続けて出版された。一冊は『共に歩む 横山白虹・房子俳句鑑賞』(飯塚書店)、もう一冊は句集『夏至の雨』(角川学芸出版)。
『共に歩む』は、「自鳴鐘」に連載されたものを纏めたものという。一章の「評伝・横山白虹」には、横山家が代々長州毛利家に仕えた士族とあったり、NHKドラマの「花燃ゆ」ではないが祖父幾多郎は松下村塾で学んだこともあったというくだりがある。
愚生は、ただの庶民に過ぎないが、生まれが山口こと長州なので、それだけで少し嬉しくなる。
追われた故郷も今や懐かしい。二章「白虹・房子十二か月」、三章「房子春秋」も月々の俳句を鑑賞するなかから文字通り白虹・房子の生涯が浮かび上る。

   雪霏々と舷梯のぼる眸ぬれたり       白虹
   ラガー等のそのかちうたのみじかけれ
     ニコは娘谷子の愛称なり
   ニコよ!青い木賊をまだ採るのか
   原爆忌乾けば棘をもつタオル        房子
   霧こめて河原ひろがる白虹忌
   夏潮のうねりぞ遠き日のうねり

句集『夏至の雨』は寺井谷子の第六句集。白虹・房子と続いた「自鳴鐘」を当然のごとく継承して主宰となった日々が重なっている。昭和23年6月に復刊された「自鳴鐘」も800号、もの心ついてからの寺井谷子の歩みと重なる。「俳句は私にとって一本の鞭である。私は私の一本の鞭を対立(バランス)を以てささえ様とする。形式上の対立。旋律上の対立。情緒の対立ー」(白虹)の言をささえに、新興俳句の系譜につながる志を生きる寺井谷子がいる。
「新興俳句は即社会性俳句である」と述べたのは確か三橋敏雄だった。

   八月がくるうつせみとうつしみ       谷子
   原爆投下予定地に哭く赤ん坊
     〈枯草のひとすぢ指にまきてはとく 白虹〉
   枯草のやさしき縛を愛しめり




   

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