2015年5月22日金曜日
久保田紺「ぎゅっと押しつけて大阪のかたち」(『大阪のかたち』)・・・
川柳カード叢書③・久保田紺句集『大阪のかたち』(川柳カード)には大阪弁の句がかなりある。
いくつかを拾ってみよう。
(まあ、言ってみれば大阪弁は大阪のかたち、ということでこじつけたに過ぎないが・・・)
やさしいところが曲がるんやと思う 紺
こんなとこで笑うか血ィ出てんのに
うつくしいとこにいたはたったらええわ
絶叫のカバ誰が妖怪やねん
おっちゃんの青いところはなんやろう
誰も見てなくてもたぶん踊らはる
どこの子やと言われたときに泣くつもり
やっほーうちのほうがえらいことやでー
泣きながらそっと一マスあけはった
モザイクかけたらデートしてもええよ
線路が曲がるくらいおこったはるねんて
お愛想の顔のまんまで寝たはった
うちに言うたら秘密ではなくなるで
あの人とはなんにもなかってんほろほろ
川柳の言葉は実に自由だと思う。人の心理の機微を表現するには、俳句と同じ五・七・五でありながら、この離れかたにははるかな何かがある、と思える。
「大阪のかたち」といいながら、しっかり「その大阪はわたしのと違います」とも記している。
現代俳句は多く題詠を捨てたが、川柳は今でも題詠が主流のようである(愚生の勝手な推測だが)。つまり、短歌・俳句・川柳の定型詩の伝統がいまだに守られているのが川柳ということになるのかも知れない。
愚生好みの句を以下に挙げよう。
銅像になっても笛を吹いている
海はまだか海に出たくはないけれど
裏切ると豪華賞品が出ます
回っているからとうさんはだいじょうぶ
着ぐるみの中では笑わなくていい
傾いたままで結構走れます
小池正博は解説「人間のグレーゾーンー久保田紺の川柳」で、以下のように見事に評している。
この句集のどのページを開いてみても、そこには久保田紺の川柳眼がとらえた人間の姿がある。それはちょっぴり悪意の眼で眺められていたり、冷徹であったりするが、冷酷ではない。だから彼女の句に似合うのは「痛い」ではなく「痒い」である。
最後に愚生の献句を・・・
大阪のかたちをいえば久保田紺 恒行
久保田紺(1959年生まれ、2005年川柳を始める)。
ブラシノキ↑
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