2020年6月26日金曜日

秦夕美「花の兄ふはりと着地せる神も」(「GA」85号)・・




 「GA」85号(編集発行人・秦夕美)、「あとがき」には、「もう出さないつもりの句集を出すことにした。『五情』以後の俳句がかなりある」とあった。「『さよならさんかく』は後期高齢者になってからの俳句だ」ともあった。

 犬と孫と俳句。八十代はそれなりに忙しい。
表紙の葉は雑草の一種。必死で花を咲かせているのを見るとせつない。

と記されている。エッセイ「言葉のあわいに」の「サーカス」には、

(前略)この冊子は婆さんの玉乗りかもしれないけれど、もう少しは続けられそう。令和元年に拘って出した句集『夕月譜』は三十年以上前に出来た空中ブランコの集大成だ。ジンタの響き、天然の美の曲に魅せられた若き日からサーカスのテントの中の世界に住み続けてきた。テントの外の世界は退屈でつまらない。ただテントの中であっても、まだ、お手々つないで、前を歩く気にはなれない。婆さんの玉乗り?熊さんの方がいい?

 エッセイのほかに、蕪村句鑑賞、短歌、俳句もある。いくつかを以下に挙げておこう。

  受話器より冬の海鳴り木の匂ひ         夕美
  城門や水をくゞれる春の音
  ゆびさきのねむたき色や牡丹雪
  羅の裾のあそべる奈落かな
  鳥翔てりにがき音もつ雪解川
  花おぼろ指格子くみあぐねては
  ゆるぎなき絆のひとつ水無月のかはたれどきをよぎる鳥船
  つつがなく過ぎゆく日々に凹凸のほしきと思ふなんとぜいたく





★閑話休題・・・鳥居真里子「草笛をためしに吹いてゐて本気」(「門」7月号)・・・

「編集後記」に鈴木節子が、

 ◆コロナ菌の強さには、人間は負けている。どうしようもない事実。(中略)こんな中、昨年から決めていた私の主宰交代、私の米寿を期に、真里子新主宰となった。私は更に俳句精神を磨きたく思う。新主宰と共に皆さん励んで下さい。

 とあった。そういえば、「俳句界」(文學の森)7月号の「俳句界トピックス」に「『門』」主宰交代、という記事を目にしていた。それには「主宰の鈴木節子氏は名誉主宰として、後進の指導にあたる」「師系は石田波郷、能村登四郎。詩と俳の融合を志し不易を心に挑戦する」と記されていた。鳥居真里子は鈴木節子の実妹、昨年2,3回ほどだったが、「椋」や「鷹」の人たちと一緒の「浜町句会」ではお世話になった。愚生は初代主宰・鈴木鷹夫以来「門」誌の寄贈、著作物を恵まれてきた。益々の発展を祈る。ほかに本誌本号では、安里琉太が「門作家作品評・4月号より」を執筆している。ともあれ、同誌より幾人かの句を以下に挙げておこう。

  死に水といふ水思ふなり夏の月      鈴木節子
  はんざきの流眄月の出はまだか     鳥居真里子
  首のつぼ押へて春愁の痛み       野村東央留
  四月馬鹿コロナウイルス強気なる    小田島亮悦
  ぶらんこに花束がのる理想論       成田清子
  春愁の遺筆の墨を磨りにけり       神戸周子
  白をもて蝶は虚空を楽しみぬ       大隅徳保
  疫病はうつつなりけり花月夜       長浜 勤
  細胞眩しすぎたる白木蓮        石山ヨシエ
  もう九十年まだ九十年春生る       布施 良
  嘘のやうなる病名春を宙ぶらりん     関 朱門
  振り向けばちゑの逃げゆく知恵詣    梶本きくよ
  
  

撮影・芽夢野うのき「一面の愛半面の愛白い花」↑

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