小川軽舟『俳句日記2014 掌をかざす』(ふらんす堂)の今日の日付、つまり、10月3日をめくると(昨年は金曜日)、以下のように記されている。
「年をとると月日の経つのが早い」とよく言われるが、私にはその実感がない。変化に富んだ毎日をめいっぱい忙しく過ごしていると時間はそうあっさりとは進まない。この俳句日記を続けるだけでもずいぶん時間に錘がつく。
過ぎゆける時間芳し草雲雀
それにしても、「草雲雀」という季語は紛らわしい。愚生などはてっきり、揚雲雀ならぬ草雲雀だから春ではないかと思い違うタイプである。ともあれ、鳥ではさらさらなく、コオロギの仲間で身体はさらに小さく、関西方面では「朝鈴」と呼んでいるらしい。明け方にフィリリリと細い声で鳴くので、よっぽどふさわしいようにさえ思える。別名に金雲雀もあるが、やはり、この一句、上句に対して、さすがに草雲雀がもっとも相応しい。
余談だが、本著の装丁は、どこか聖書を思わせるところがある。聖書、すなわちバイブルであるが、ものの本によると、次の日、1535年の10月4日、およそ480年前のこの日、最初の英語版聖書の印刷が出来上がった日なのだそうである。決定版の欽定聖書は、それに遅れること、1611年。そのBibleの語源はギリシャ語経由のフランス語で、英語はそれをそのまま借用したとある。ようするに「書物」ということらしい。ただ、それらの最初は小文字らしく、大文字Bで始まるBibleは「これこそが書物」という意味あいらしい。
「俳句はささやかな日常を詩にすることができる文芸である」とは、俳句ではまさに聖書(Bible)の言葉に近いのかも知れない。
キンモクセイ↑
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