2019年8月26日月曜日
橋本七尾子「回覧板回せ隣りの惑星に」(「円錐」第82号)・・
「円錐」第82号(円錐の会)、今号の目玉は「第三回円錐新鋭作品賞授賞者最新作掲載」である。そぞれの句を挙げると、
・花車賞(澤好摩推薦)受賞者
亀鳴くや※CM上の演出です 神山 刻
・白桃賞(山田耕司推薦)受賞者
向日葵や体を撃ちまくるゲーム 西生ゆかり
・特別賞(編集部推薦)受賞者
焦螟裂ける雨あがりなり 中山奈々
なかに、待望の今泉康弘第一評論集上梓の予告広告とともに、これを読めば、今度出る評論集の中身のおおよそが知れるという紹介があり、山田耕司「それこそ今泉康弘-評論抜粋およびエッセイ一挙掲載」とある。その書名は『人それを俳句と呼ぶ』(沖積舎)。今年秋刊行とあるから、もう刊行目前ということだろう。山田耕司が冒頭に、「今泉康弘にとって大きな事件である」といい、「同時に、俳句という文学領域にとっても大きな事件であるとあえて申し上げることを許していただきたい」と、友情厚く述べているが、本誌に抜粋引用されている目次のなかで、唯一、ブリジット・フォンテーヌの「ラジオのように」を論じたであろうものだけは引用されていない。本書を期待して待ちたい。ともあれ、同人諸兄姉の一人一句を以下に挙げておこう。
草刈機止め反核を主張せり 味元昭次
平成の終の櫻を大手門 小倉 紫
母の日の母とおとぎの汽車に乗る 原田もと子
あじさい山憐れみの令の中にいる 橋本七尾子
極東に掃き寄せらるる螢たり 山田耕司
けものらは手づから滅び花辛夷 荒井みづえ
水平に日を分け合うて野水仙 丸喜久枝
腋の下に平熱があり土用凪 立木 司
種袋の闇から朝を出してやる 栗林 浩
寛げる青大将と目が合ひぬ 後藤秀治
竹皮を脱ぎ残照を羽織りたる 田中位和子
なきがらに仰臥を強ひる花の昼 大和まな
狭庭の程好い所蟻地獄 江川一枝
鴨残る郵便番号一一〇(いちいちぜろ) 小林幹彦
短夜の手枕に老い泯びゆく 横山康夫
けつたいなお面の笑う屋台かな 矢上新八
不戦不敗日照りの黒潮部隊かな 三輪たけし
夏草やのらくろ胸に星ひとつ 山﨑浩一郎
朝涼のあたまと枕別にあり 澤 好摩
主は雨に来ませり「起きろ、死ぬ時だ」 今泉康弘
おぼろ月神樹(かむき)は乳を垂らしたり 和久井幹雄
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