2021年12月2日木曜日

関口比良男「子の傘のたちまち濡るる冬の雨」(『関口比良男全句集』)・・


 『関口比良男全句集』(紫の会・文庫版・本体1500円)、関口比良男の句集全12冊から俳句作品を収録し、俳句作品以外の内容は殆ど割愛したとある。略年譜は1985(昭和60)年・比良男77歳までは自筆で90歳で帰天するまでは、「紫」から採録したとある。「あとがき」は山﨑十生、その中に、


  先師(愚生注:関口比良男、旧号櫻士)は、上林白草居の門に入り、徹底的に写生俳句を学んだ。その後、日野草城の「青玄」中村草田男の「萬緑」で研鑚を積み、富沢赤黄男や高柳重信、三橋鷹女、津久井理一等と同人誌活動をした経緯から、作品傾向も大きく変わった。年代順に編集されているので、読んで戴ければ自ずとその足跡をご理解して戴けるのではなかろうか。


 とあった。第一句集『冬紅葉』は昭和18年刊、第二句集『湖畔』は昭和二十二年刊(昭和19年から22年までの作品を収める)など、最後の句集『黄金律』(平成13年刊)は遺句集となっている。

 愚生は、関口比良男の尊顔を数度しか拝することはなかったが、それでも、当時「紫」編集長だった山崎十死生(当時)の配慮で、若き日の攝津幸彦や仁平勝の講演が企画され、愚生も聴いたのだった。年譜をみると、1994(平成6)年に、「紫」600号記念号が刊行された折り、比良男86歳の時、「『紫』の題号および経営の形態や方針につきましても、十死生君にすべて一任する考えでおります」としたためられている。ともあれ、本集より、アトランダムになるがいくつの句を挙げておこう。


     満州事変勃発

  児にとりまかれ号外を貼る壁の朝の陽

     鈴鹿野風呂翁来泊

  師は吾子の手を執りたまひ後の月

     昭和二十二年降誕祭妻受洗

  妻を主にゆだねまゐらせ冬日宙

  最大風速身をかわされてころげゆく

     妻を喪う

  長命の手相空しく握らるる

     再婚

  手を取れば冬陽その手に燃えにけり

  鼠算やがて残らず滅びけり

  天の縄引けばたちまちしぐれけり

  虫の国そこは大道無門かな

  すみれは薔薇に譲らない譲るわけがない

  呼吸(いき)すれば莫迦梵と鳴る風邪の胸

  

 関口比良男(せきぐち・ひらお) 1908~1998年、東京世田谷三軒茶屋生まれ。享年90。



   撮影・中西ひろ美「冬鳥や此処で落ち合う人のため」↑

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