「 Magellan Future(マゼラン・フーチャー)」01(編集発行人 本田信次)、ブログタイトルにしたのは、本田信次の詩「共鳴」の最初の4行である。第2連の「石を蹴ろう/川に喜ばれる音を出すために/葉を揺らそう/森に愛される音を出すために」と、展開してゆく・・・(以下略)。編集後記には、
「Magellan Future」創刊号をお届けする。
かつて「Magellan」という詩誌を発行していたが、十一号で終刊してはや十三年が過ぎた。その間、書くという行為においては、臆病で無為な日々を送っていたが、昨年、高橋修宏氏との二人誌「NS」がスタートし、私の中で久しぶりに主体的な取り組みが始まったといえるかもしれない。
その余勢を駆って小誌創刊となったわけであるが、基本は「NS」とは非対称な親和性を持った個人発行誌というスタイルを貫いていこうと思う。
「NS」がデュオにとる詩的な実験を行う工房とするなら、「Magellan Future」は、アンサンブルの力を借りてポエジーの空間を開いていく場としたい。
とある。本号の寄稿者は、井坂洋子「秋の廊下」他、時里二郎「沙海島(さかいじま)」他、福間健二「フミちゃんの眠らない夜」、田原「かなしみ」、高橋修宏「古鏡」他。発行人の本田信次は、エッセイに「直筆という所与ー言葉をめぐる断章」があり、詩篇に「好きなだけここに」「共鳴」「パターンの鳴動」である。なかで、唯一、愚生の面識があるのは福間健二、ただし、15年以上は以前のこと、先日亡くなった、岡田博(ワイズ出版社主)の事務所でのこと。彼は映画の本の出版打合せで見えられていたのだが、挨拶程度のことだったので、たぶん、お忘れだろうと思う。また、本田信次のエッセイに登場する瀧口修造だが、荻窪駅近くの画廊(名を思い出せない)で開かれていた個展にお邪魔して、お会いしたことがある。実に穏やかな老紳士という印象だった。愚生の、黒い紙に拙い墨で書いた50句の自筆第一句集『秋(トキ)ノ詩(ウタ)』(私家版)は、後に書肆山田を継承した鈴木一民の制作であり、その衣装の発想は、瀧口修造の『地球創造説』を真似たものだった。
ともあれ、本ブログでは、長い詩篇は紹介しきれないので、一番短い、田原の詩「かなしみ」を挙げておきたい。
かなしみ 田 原
海の向こうに
涙の涙の奥に
白い喪服の列が続いている
庭の枯れ木の枝に
屋根の瓦の上に
見えない寒気が流れている
馬車は棺を載せ道は痛ましく
道は地平線を分断して墓まで延びている
眩しい日差しに暖かさはない
凍っていない小川の流れは
死に水のように止まり
西風は雲を空の彼方へ追い払った
そこはあの世かほかの星か
鳥の姿はなかった
終わらない泣き声にびっくりしたか
花輪は土山で満開
それは母の最後の笑顔
ー詩集『詩人と母』より
芽夢野うのき「戦をしない美しき枯れ色になり」↑
大井恒行さま。小誌をご紹介頂き、ありがとうございます。瀧口さんとお会いされているのですね。素敵です。なんだか目に浮かんでくるようです。 本田信次
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