2017年8月18日金曜日

橋本明「笑顔ふり手ふり踊るや車椅子」(第170回遊句会)・・



 昨夜は記念すべき第170回の遊句会、於:たい乃家だった。毎月一回開催として、単純計算でも14年以上続いているということになる。とは言っても、愚生はつい最近加わった、もっとも新参者のペイペイなのである(句歴は愚生が馬齢を重ねるごとく一番長ーいのだが・・)。
 今月もその一人一句を以下に紹介しておきたい。

  無花果のなめらかという摩擦      たなべきよみ
  いちじくの舌にざらりとアジアかな   石川耕治
  無花果のどこやら腐肉食(は)むここち 武藤 幹
  盆踊り三池を知らぬ月が出る      植松隆一郎
  一村に五十余人や盆踊り        村上直樹
  無花果の実は謎のまま失楽園      山田浩明
  秋めくや老いの矜持が邪魔をする    石原友夫
  飯館や無花果熟れて朽ちをまつ     石飛公也
  道草の戯(ざ)れ合う影も秋めきぬ   橋本 明 
  秋めくや警策響く古刹かな       山口美々子
  死んだ子が輪の中にいる盆踊り     春風亭昇吉
  無花果やシルクロードの旅遥か     中山よし子
  無花果の切り口に乳母恋ひし      渡辺 保
  無花果や報われぬ事多かりき      林 桂子
  午後五時の家路のメロディ秋めいて   加藤智也
  無花果は古来稀なる内気なり      原島なほみ
  噺家の座っておどる盆踊        大井恒行



★閑話休題・・・

 小林良作著『八月や六日九日十五日』(「鴻」発行所・900円)のことを記す。
本書は「八月の六日九日十五日」という句を著者の小林良作が作ったところ、先行類似句ありとされて、ボツにされたことから話しが始まる。実はこの句には多くの類似句、いや同じ句が存在することが分かり、著者は、この句を最初に作った人を探し出す旅を敢行するのだ。
 つまり、同じ句を戦後に多くの俳句愛好者、俳人が偶然にも詠んで来たのだ。
 この本を遊句会の渡辺保氏が、読めといって愚生に貸してくれたのである。
探索のすえに著者は、この句を最初に作った人にたどり着く。その人の名は諌見勝則、内科医で当時江田島の海軍兵学校にいて原爆を目撃、次に故郷・長崎にも投下された。句は、大塚製薬NO470に所載されている草間時彦の特選選評にたどりつく。しかも大分県宇佐市城井の掩体壕公園には句碑もあった。90歳で逝った父・諌見勝利の子息・康弘氏の本著へ寄稿には、

  九十歳で逝く半年前のクリスマスに洗礼を受けた父は、これらの出来事が、その時まで記念され、そしてそれが真の平安に新しく生まれ変わりますようにという祈りを、この句の中で祈り続けていたのではないでしょうか。

と記している。この先行句に対して、愚草「八月尽六日九日十五日」、中村洋子「八月の六日・九日・十五日」など、詠み人知らずを加えて15人ほどが、表記も同じ句や類似句を作っていた。これらは盗作ではなく、日本の八月に込められた各作者の気持ちが、5・7・5という短い構造だからこそ、同じように顕現したのであろう。



          撮影・葛城綾呂↑
  
  

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