2017年8月1日火曜日
金子兜太「梅咲いて庭中に青鮫(あおざめ)が来ている」(『名句徹底鑑賞ドリル』より)・・
髙柳克弘『作句力アップ 名句徹底鑑賞ドリル』(NHK出版)、読みやすく、なかなか面白い。愚生のようないい加減な者には、改めて気づかされることもある。
著書は二部構成で、第一章は「名句徹底解剖」、第二章は「名句名勝負」で、その他にはいくつかのコラムもある。ドリルといいながら、読み物としても良く出来ている。第二部の名句名勝負を例にあげておこう。
【名句名勝負5】 「反戦を詠む」 Q1、反戦の思いを、より直接的に詠んでいるのはどちらでしょう。
原爆許すまじ蟹(かに)かつかつと瓦礫(がれき)あゆむ 金子兜太(かねことうた)
✖
あやまちはくりかへします秋の暮(くれ) 三橋敏雄 (みつはしとしお)
Q2 「あやまちはくりかへします」は、ある場所に建てられた碑(ひ)の文をもじっています。碑がた建てられているのは、どこでしょう?
Q3 戦争を繰り返す人類へのアイロニカルな視線が感じられるのは、どちらの句でしょう?
Q1の正解は金子兜太の句、Q2の正解は「広島平和記念公園」。Q3は三橋敏雄の句である。正解と同時に髙柳克弘の解説が読ませる。構成もよく練られているのではなかろうか。最後に「まとめましょう」とあって、それには、
兜太は大正八(一九一九)生まれ。敏雄は同九年生まれ。二人は一つ違いで、ともに戦争の現実を体験した世代です。彼らの反戦句は、一方は直情的で、一方は韜晦(とうかい)的。対照的と言っていいほどですが、戦争を憂い、体験の思いを俳句という形で後世に伝えようとする真摯(しんし)さは、共通しています。
と、分かり易く、的を射た解説である。
本書は「NHK俳句」の連載を一冊にまとめたもの。巻末には、掲載句の俳人紹介、俳人別索引、季語別索引も付されている。
髙柳克弘(たかやなぎ・かつひろ)1980年、静岡県生まれ。
睡蓮、 撮影者・葛城綾呂↑
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