2017年8月13日日曜日

中川智正「真白から鳥なき獄へ白鳥来」(「ジャム・セッション」第11号)・・



「ジャム・セッション」は江里昭彦の個人誌である。本号・第11号のゲスト作品の嵯峨根鈴子「シュプレヒコール」から以下に一句。

   液晶の画面を水素爆弾がゆく      嵯峨根鈴子

ブログタイトルの句「真白から鳥なき獄へ白鳥来」には、前書が「松下カロ氏の『白鳥句集』を拝読」とある。中川智正の他のいくつかの句を句紹介しよう。

  裏返しのシャツを笑われ夏隣    智正
  三途ふと何級河川か春一番
  徘徊をせぬ母が見る大まぐろ
  義士の日や我ならきっと吉良の侍医
  初陽受く賀状見ること許されず
  おでん吹く腫れ物として獄に生き
  配属の換わる看取と春の午後

 他の読み物中、愚生のもっとも惹かれたのは江里昭彦「哀悼 宍戸恭一氏」である。宍戸恭一は今年1月22日に95歳で天寿をまっとうした。京都・三月書房の店主だった。愚生が二十歳の頃、京都にいた3年間に幾度か店に行った。当時(1968年ころ)、その店には、左翼系党派の機関誌がすべて置かれていた。したがって、最初は故・厚見民恭(玄文社)に連れて行ってもらったのだったと思う(玄文社では、上野ちづこ・江里昭彦らの「京大俳句」が印刷されていた)。いわば、一般書店が敬遠する反体制的な書籍や雑誌が売られていたのだ。その後は、江里昭彦がいうように最新の詩歌の書が、多く置かれる店になっていたから「俳句空間」(弘栄堂書店版)も出るたびに一冊ずつは置いてもらった。
 他の文中、宍戸恭一が江里昭彦と中川智正との縁を結び「ジャム・セッション」を出すにいたる経過も記されている。
 また、「あとがき」には、以下の部分も記されていた。

(前略)まず第一に、VX事件に関する中川氏の発言についての反応である。「資料」として掲載した。北朝鮮の金正男氏が化学兵器であるVXで殺害されたことを、マレーシア警察が発表する前に、氏が言いあてたことは、大きな反響を呼んだ。もちろん確定死刑囚である中川氏が記者会見に応じることは不可能なので、代わりに、氏と接触できるアンソニー・トゥ博士(コロラド州立大学名誉教授)に取材依頼が殺到することとなった。
 新聞、雑誌、NHKニュースに加えて、「アンソニー・トゥ VX」で検索するなら、インターネット上でも多くの記事が読めるだろう。

 ともあれ、本号の江里昭彦「沖縄から遠く離れて」から以下に挙げておこう。

  徴兵ののちも美男という病    昭彦
  水葬かもしれずとどまる沖の船
  拷問の警官がする鰓呼吸

また、以下に同封されていた琉球新報の記事を転載しよう。



  

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