2020年10月11日日曜日

渡辺誠一郎「出撃も撃滅もなき蜻蛉かな」(『赫赫』)・・・



 渡辺誠一郎第4句集『赫赫(かくかく)』(深夜叢書社)、その「あとがき」に、


 この間、、東日本大震災から九年が過ぎた。そこに突如、新しいウイルスが地上に蔓延し始めた。天変地異は常の事だと改めて思う。ただ生き延びるしかない。

 私はといえば、あまり代り映えのしない日々が続いている。強いて変わったことといえば、震災への体験を、少しでも内面化に努めるようになったことであろうか。


 とあった。従って、集中には、震災、原発など、また、師の佐藤鬼房にまつわる句なども多い。集名に因む句は、次の句であろう。


   赫赫(かくかく)と闇に爪掻く老蛍     誠一郎


 ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておきたい。


   地にふれぬための蹴爪や夏の風      

   晩節の影に寄り来る断腸花

   瓦礫失せ一痕として冬の星

   冬薔薇聖書にはなき誤植

   一枚は地祇のためなり蛇の衣

   軍装を今だに解かぬいぼむしり

     東日本大震災から7年目

   閖上浜(ゆりあげ)の芽吹かぬ木々と芽吹く木と

   月の出や疼くは二心房二心室

   幾万の汚染袋や霜しずく

   枯野原廃炉の朝は杖ついて

 

 渡辺清一郎(わたなべ・せいいちろう) 1950年、塩竈市生まれ。



       芽夢野うのき「辛夷の実うからはらからみな喪服」↑

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