2020年10月28日水曜日

赤澤敬子「父の戦死母の戦後を蛍飛ぶ」(「第57回現代俳句全国大会入選作品集」)・・・


 「現代俳句」11月号臨時増刊号(現代俳句協会)、まるごと一冊「第57回現代俳句全国大会入選作品集」(主催・現代俳句協会、後援・文化庁、毎日新聞社、読売新聞社、朝日新聞社、中日新聞)である。応募句総数14535句。去る10月25日に、名古屋市の名鉄ニューグランドホテル開催予定のもろもろの行事は、新型コロナウイルスの感染拡大により中止された。とはいえ、愚生も選者の一人だったので、まずは愚生が特選に選んだ句が5句記録されているので、作者に敬意を表して挙げておきたい。特選1位はブログタイトルにした句である。

   父の戦死母の戦後を蛍飛ぶ       赤澤敬子

   生きている骨抱く痩せた膝を抱く    直江裕子

   雲は気を樹は影を吐き八月来      夏木 久

   ははの戦後はわれの戦前百日紅     加藤遊名

   令和はや祈りに満ちて返り花      吉倉紳一


 選考はどうしても、各選者の点の多く入った高点句が受賞の栄にあずかるので、ある種の大衆性、一般性、通俗性の有している句にならざるを得ないところがある。ともあれ、以下に大会賞などを記しておきたい。

  

  白シャツの青田匂ひして乾く     武市忠明(現代俳句大賞)

  二人しか入れぬ木陰沖縄忌      岡本千尋( 同上  )

  未来だけ見てゐた頃やソーダ水    柾木幸子(毎日新聞社賞)

  ヴィーナスの誕生のごと木の根明く  吉池史江(読売新聞社賞)

  どの子にも違ふ空ありしやぼん玉   杉山一川(産経新聞社賞)

  蛇は全長以外なにももたない     中内火星(朝日新聞社賞)

  六十秒前の青空広島忌        有本仁政(中日新聞社賞)

  履歴書を書かぬ一生種を蒔く     飯田順子(俳句のまちあらかわ賞)



        撮影・鈴木純一「人ヲ見タラ葉ッパ一枚咥へナサイ」↑

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