2018年5月3日木曜日
筑紫磐井「あなたはマグマ 時代の縁(へり)の野梅です」(「俳句新空間」NO,9)・・
「俳句新空間」NO.9(2018 春、発行人・北川美美・筑紫磐井)の冒頭は「金子兜太追悼特集」。追悼文は、筑紫磐井、辻村麻乃、松下カロ、北川美美、小野裕三に加えて追善句集に34名。「編集後記」には、
多くの雑誌が「兜太追悼特集」を編むと思うが、俳句新空間での顔ぶれはそれらの顔ぶれと少し違うものが、同時代史資料として価値があるものではないかと思う。
と記されている。いうように、他の総合誌などと決定的に違うのは、依頼原稿ではなく、急遽の募集告知に対して、作者自身が自主的に書いた作品だということであろう。
本号中の前号作品鑑賞、もてきまり「日盛帖(二十句詠)鑑賞」がけっこう面白い。しかも精一杯の誠実が現れている。例えば、
大本義幸〈来し方を刺す石の鏃それが霊かも〉。競馬で負けた日に攝津幸彦との出会いがあった。攝津の〈あなめりか〉の頃、大本さんの作品〈霊魂に告ぐ〉を攝津はこんなもん俳句かと言い「豈」に載せたと云う。「石の鏃それが霊かも」。来し方を俳句形式「石の鏃」で刺して来られたのだ。
と述べている。ともあれ、以下に「平成雪月花句集」より、一人一句を挙げておこう。
雪や役(えだち)の人民(たみ)に後昭和天皇に 高山れおな
書割の月より小さし夏の月 前北かおる
家族みな写真に入り花筏 夏木 久
匹如身(するすみ)のすめらの民や雪月花 大井恒行
月の出や母在るやうに魚を煮て 渡邉美保
正面の白ふくろうは濡れている 坂間恒子
月光の氷柱に変りゆく音か ふけとしこ
すんなりとばかりではないけれど花 網野月を
雪降つてくる雪空の中途より 青木百舌鳥
鷹峯に故生田耕作氏の旧居ありし近くに墓碑、
此処に旧友と再会。帰途。
月光の墓碑飾るもの雪か花か 堀本 吟
残雪の伊吹をそれて鳥一羽 神谷 波
昭和史を読むこんな日の牡丹雪 渕上信子
戦争に使はれし日々花に問ふ 水岩 瞳
おほざくらしだれてそらは血がにほふ もてきまり
会ふ度に翳の濃くなる桜かな 辻村麻乃
月下美人咲く産道をひろげつつ 加藤知子
夏の月うしろ歩きのさやうなら 北川美美
匂うにおう寒月光かセシウムか 羽村美和子
その後の幸福といふ花疲れ 佐藤りえ
花びらのながるる黄泉の奥座敷 秦 夕美
のち日も鶴を恋せり蒼き空 福田葉子
雪月花ときには美(は)しき茸雲 髙橋修宏
撮影・葛城綾呂 セイジ↑
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