2018年5月1日火曜日
井上白文地「我講義軍靴の音にたゝかれたり」(「俳句人」no.685・5月号より)・・
「俳句人」NO.685・5月号(新俳句人連盟)には、先般行われた「俳句弾圧不忘の碑」の除幕式の様子が報告されている。丸山美沙夫「『俳句弾圧不忘の碑』除幕式に参加して」がそうだ。それには、
この「俳句弾圧不忘の碑」が、二〇一八年二月二五日、長野県上田市「無言館」近くの「槐多庵」前庭の雑木林に囲まれた中に建立され、約一五〇人の人の参加がありました。
除幕式にご出席されることになっていた、金子兜太さんが残念なことに数日前の二月二〇日夜九八歳でなくなられたことは参加者からも大変惜しまれた声が聞かれました。「革新の俳句 反戦を貫く俳人」の巨匠が除幕の綱を引かれず、三本の綱のうち一本をそのままに、兜太さんの顔写真が飾られて参加者は黙禱をささげました。代表して窪島誠一郎、マブソン青眼さんによって除幕されました。
碑には「俳句弾圧不忘の碑」と兜太さんの揮毫が大きく刻まれて、早春の光りに輝いていました。また、その下段には弾圧犠牲者一七人の作品が刻まれています。
とあった。その他、マブソン青眼からの経過報告や窪島誠一郎(「無言館」館主」からの挨拶、また、弾圧を受けた橋本夢道の次女、殿岡浩佳(ひろよ)とご主人の参加もあったことなどが記されている。ともあれ、碑に刻まれた作品作者を以下に孫引きして紹介しておきたい。
降る雪に胸飾られて捕へらる 秋元不死男(東 京三)
憲兵の怒気らんらんと廊は夏 新木瑞夫
墓標立ち戦場つかのまに移る 石橋辰之助
我講義軍靴の音にたゝかれたり 井上白文地
戦争をやめろと叫べない叫びをあげている舞台だ 栗林一石路
兵隊が征くまつ黒い汽車に乗り 西東三鬼
出でて耕す囚人に鳥渡りけり 嶋田青峰
一兵士はしり戦場生まれたり 杉村聖林子
千人針を前にゆゑ知らぬいきどほり 中村三山
戦闘機薔薇の野に逆立ちぬ 仁智栄坊
血も見えず敵飛行士の亡せゐたり 波止影夫
大戦起るこの日のために獄をたまわる 橋本夢道
徐々に徐々に月下の俘虜として進む 平畑静塔
ナチの書のみ堆し独逸語かなしむ 古家榧夫
英霊をかざりぺたんと座る寡婦 細谷源二
血も草も夕日に沈み兵黙す 三谷 昭
戦争が廊下の奥に立つてゐた 渡辺白泉
国内外69名の呼びかけ人と、協賛者約570名、約330万円の寄付金が寄せられたともあった。なにもしなかった呼び掛け人の一人でもあった愚生は、ひたすら御礼を申し上げるのみである。
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