柴田奈美第3句集『イニシャル』(本阿弥書店)、帯の惹句に、
まっすぐな眼差しーー
それは「生」を希求することに宿るのだろうか。
恵方を一直線に目指す滑走路、吉方を指さす落ち手套。
先の見えない人生を切り拓く物象に導かれ、しなやかに、
言葉を繰り出す著者、15年ぶりの最新成果。
とある。また、著者「あとがき」には、
(前略)第三句集の出版は最近まで考えておりませんでしたが、姪や姪の子どもを詠んだ句、父の死を詠んだ句や、体調回復のために始めた社交ダンスの句も作れましたので、記念に出版することに致しました。
装幀は、大好きなミュシャ風の薔薇の花をお願い致しました。薔薇は私の誕生花で、好きな季語の一つだからです。句集名は社交ダンスのイメージでカタカナ語にしたいと思い、句に使用した『イニシャル』と致しました。
とあった。集名に因む句は、
イニシャルのKにときめく古日記 奈美
であろう。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておこう。
青嵐炎のごとく白馬佇つ
コルク栓脆く砕けて夏猛る
弁柄の褪せし明るさ初燕
我が影の胸のあたりにダリア植う
紅絹(もみ)擦りの音なり雪の降り出せり
窓という窓を叩きて雪女
じゃんけんのあいこ続いて蝶の昼
秋の蝶紋のほころびかけてゐる
天寿といふ言葉戴き冬銀河
自画像の苦悩の皺や万愚節
先行くは考の背広か囀りぬ
種痘痕あらはに母のあつぱつぱ
白鳥の首は哲学的に垂れ
柴田奈美(しばた・なみ) 1958年、岡山県生まれ。
撮影・芽夢野うのき「小さな美女も眠れ眠る月夜の森」↑
拙句集『イニシャル』をご鑑賞くださいまして、ありがとうございました。とても嬉しいですし、光栄です。今後の句作の励みになります。ありがとうございました。
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