2016年9月5日月曜日

遠藤若狭男「海の色変へては若狭秋しぐれ」(『遠藤若狭男句集』)・・・



  昨年「狩」同人を辞して「若狭」を創刊した遠藤若狭男の現代俳句文庫81・『遠藤若狭男句集』(ふらんす堂)は全400句の選句集。解説に福島泰樹、伊藤伊那男、大牧広の再録。自身のエッセイに「塚本邦雄の『若狭男』」、「悲痛な魂の声」、「『若狭』創刊のことば」を再録収載している。
 遠藤若狭男の軌跡をたどるには手ごろな一冊である。
愚生より一歳上の1947年福井県敦賀市うまれ。つまり若狭は彼の故郷である。というわけもあって「若狭」の地を詠んだ句も多い。とはいえ最後に置かれた句は、

       生きる
   人間の証明として枯野ゆく

 座五「枯野ゆく」はなかなか切ない。

   八月の海へ敬礼して父よ
   踏み分けて行けぬところに初もみぢ
   にぎやかな数とはならず初雀
   われ去ればわれゐずなりぬ冬景色

 などの句は捨てがたい。
 ともあれ、若狭づくしの本集の中から「若狭」の地名入りの句を以下に記しておこう。

   しぐるるや若狭のはての若狭富士
   湖ありて若狭の国のさくら冷え
   春惜しむ御目(おんめ)を伏せて若狭仏
   若狭路の風の薫らぬところなし
   夕立のあとの若狭に帰り来し
   若狭路や残菊にして色つくし
   草の絮若狭恋しと飛びゆくか
   若狭路のはづれにありし虫浄土
   若狭路の鴉を落穂拾ひかと
   立秋や船より仰ぐ若狭富士
   航跡のあざやか若狭湾の秋
   沙羅咲いていちにち雨の若狭かな
   海を見に春の若狭へ帰りたし
   若狭なつかしめばすいと夕螢
   



                    フヨウ↑
   

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