2016年9月6日火曜日
四ッ谷龍「垂直・斜め・折れたのもある采配蘭」(『夢想の大地におがたまの花が降る』)・・・
四ッ谷龍、1958年生まれ。愚生よりちょうど十歳若い。先般は見事な『冬野虹作品集成』(書肆山田)を刊行し、同じ版元から、今度は自身の句集『夢想の大地におがたまの花が降る』(書肆山田)を上梓した。句集らしからぬ書名だが、それも四ッ谷龍には相応しかろう。
ただ愚生は不明にして「おがたまの花」を知らない。ただ、ものの本によると神霊を招き寄せる神木「招霊(おぎたま)の木」が転じたものという。榊の代用にもなったらしい。花言葉は「尊敬」というから、持っている意味も深そうである。巻末に本句集に対する著者覚書がある。短いので全文引用しよう。
本書は前句集『大いなる項目』に続く作品集で、平成二十年以降の五四七句を収める。
この間、若い俳人たちと交流する機会が増えたこと、東日本大震災が発生しいわき市の津波被災地を繰り返し訪問したこと、ヨハン・ゼバステァン・バッハの音楽を研究したことなどが、句集の内容と構成に影響しているかもしれない。
作品の配列は必ずしも制作順になっていない。
平成二十八年五月 四ッ谷龍
愚生のわがままな好みとしては、句数が多すぎる感じがしないでもないが、これは作者自身の志向があるだろうから、そのまま受け取っていくしかない。連作が多いのだが、ともあれ、いくつかの句を紹介しておきたい。
白椿遺灰の白さとも違う 龍
鉄打てり真昼に影の増ゆるなり
灰色の子猫の死体駐車場
狐の目光る闇へと参加しぬ
ヌルハチぬるぬるぬくぬくぬばたまのぬ
仮の家また仮の家また躑躅
化石の崖われらの影は雲のよう
「ちぇー」と息しまた雪を割る若い職員
犬酸漿千切れば我は女(おみな)かな
木(ぼく)AのおがたまBへ写像せる
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