2016年9月18日日曜日
正木ゆう子「へんくつなばあさんになろゐのこづち」(『羽羽』)・・・
正木ゆう子第五句集『羽羽(はは)』(春秋社)。句集名は、
たらちねのははそはのはは母の羽羽
の句から。「あとがき」には以下のように記されている。
辞書には大蛇のことと記してありますが、その他にも「羽羽矢」という言葉があるとか、掃き清めるというニュアンスがあるとか、後でさまざまな意味のあることを知りました。しかしこの句集では、単純に大きな翼という意味に使うのが最も相応しい気がします。
かねてより、正木ゆう子には肉親の死を詠んだ句に絶唱が多い。たぶんそれは彼女の言葉がより身体の深いところをくぐって浮上してくるからだろう。ブログタイトルに挙げた句「へんくつなばあさんになろゐのこづち」は、もともとへんくつなところ大ありの正木ゆう子のことだから、みずから宣言せずともなれるだろう(もちろん、魅力ある偏屈、ここではかたくなな姿勢の良さとしておこうか)。
装幀はいつもの通り、夫君の笠原正孝。これも佳い。
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。
口蹄疫
牛と死の犇めく土中走り梅雨
飛ぶ鳥の糞(まり)にも水輪春の湖
寄居虫の小粒よ耳に飼へさうに
劫初より太陽に影なかりけり
真炎天原子炉も火に苦しむか
もうどこも痛まぬ躰花に置く
夏に入る草葉の陰の線量も
冤霊てふ言葉知りたる冬の寺
能村登四郎に「老残のこと伝はらず業平忌」あれば
絶滅のこと伝はらず人類忌
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