2020年5月4日月曜日

竹内悦子「天竺へ毛毬ころがす七変化」(『喜悦』)・・・




 竹内悦子第三句集『喜悦』、跋は中島陽華、その結びには、「嬉しいことにあと三年余りで卒寿。卒寿を過ぎたら俳句は口から出まかせがいいそうな。しっかり長生きして卒寿の醍醐味を大いに味わえるように健康に気を付けて下さい」と記されている。装幀は三宅政吉。集名の由来については、岡井省二先生の著書に、

   自由自在、融通無礙(むげ)、遊戯(ゆげ)三昧に生きる、表現する、俳句する。
  そこに法悦と歓喜の境位を体感する、からだそのものとする。その辺に俳句の 
  醍醐味はあろうか。
 
と記されている。この「法悦よ歓喜」、そして、工場と住居新築の折、お祝いに頂いた色紙から句集名を『喜悦』とした。

 とある。その色紙は本書巻頭の写真に収めてある。「竹柏の内に育む生業は喜悦めでたく真実昌盛」としたためてあって、「槐山房」の花押がある。従って、師の岡井省二に因む句は、当然ながら多い。例えば、以下にいくつか抄出すると、

     省二先生身罷る
  澄む月の天上にあり曼荼羅記    悦子
     岡井邸の池
  緋目高や夜空に星が見えますか
  麻三斤の軸吊るしあり夏座敷
     熊野 省二句碑
  大蜥蜴襟巻をして出でにけり
  幾たびも夏鶯が啼きに来る
  先生のこゑに目覚めておらが春
  稲荷山に春の雪呼ぶ省二かな
  黒竹の杖と省二と花鯎
  木の股に猿の腰掛省二の忌
  敷物は牛の文様省二の忌
  人日や「鯨と犀」を膝の上

の句がある。ともあれ、他のいくつか、愚生好みの句を以下に挙げておきたい。

  太陽は一つ寄居虫(がうな)の脱ぎし殻
  人も神も濡らしてゆきぬあばれ梅雨
  春はももいろ裏山に鳥のこゑ
  神鶏の暁の一ㇳ声悦の春
  生と死は賜るものよ花八つ手
  万愚節曲がつてゐたる銀の匙
     入場料七百円
  七百億圓の切符通天閣の夏



  
  因みに、「槐(かい)」5月号(主宰・高橋将夫)には、以下の句が「槐集」にあった。

  令和二年二ン月二十日米寿とや    悦子   


  竹内悦子(たけうち・えつこ) 昭和8年2月、大阪市生まれ。
  


撮影・鈴木純一「憲法九条?夢でもみたのであらう」↑

0 件のコメント:

コメントを投稿