2020年5月23日土曜日

福田葉子「黄昏に黒薔薇咲いて誰の忌ぞ」(「俳句新空間」NO.12より)・・




 「俳句新空間」NO.12(2020 初夏、発売・実業公報社)、筑紫磐井の「編集後記」には、

 ■紙面では、改元に伴い、俳句帖のスケジュールが大幅に乱れた。前号では、平成中の(最後の)俳句帖、本号は令和最初の俳句帖となるようにしたため、年一回の刊行となってしまった。■一方、BLOGの方では、俳句新空間参加の有志によるネット句会(皐月句会)や、俳句評論講座などの新しい試みを立ち上げた。俳人の活動が制約されているところから、従来とは違う活動の仕方を考える必要がある。どこの結社も、協会も、雑誌も従来のような、句会、イベントは出来なくなった。

 とある。ともあれ、本号の「令和四季帖」(新作20句)には、多くの方々が参加されている。以下に一人一句を挙げておきたい。

   春の句もだれかに影を落としゆく     青木百舌鳥
   自動捲の止まってしまう春眠忌       網野月を
          (×月×日 月をの忌日)
   行間に魑魅(すだま)隠れる秋灯下     井口時男
   貌よ鳥マトリョーシカの吐く嬰児      加藤知子
   COVID19に付け込まれ花の冷え         神谷 波
   生きてゐる男女の拾ふ桜貝         岸本尚毅
   朧の夜生きているものゐないのか      北川美美
   熊ん蜂父だと言って入ってくる       坂間恒子
   全人類の舌かなかなの翅と化す       竹岡一郎
   「まあだだよ」声おとし去る夕ひばり    田中葉月
           乳くさき閨の甘さよ寒北斗         辻村麻乃
   死ぬ死ぬと言ふな新茶を送るから     津高里永子
   花辛夷ここまで来れば海見えて       仲 寒蟬
   ゆく雁や握るものみな砂のごと       長嶺千晶
   ポケットに妻の骨あり春の虹        中村猛虎
   取り皿の深さまちまち蛇を呼ぶ       中山奈々
   コロナビール手に大声の7回裏       夏木 久
   少しずつ夜を閉じ込めて大氷柱      なつはづき
   又の世へ薔薇は見頃と打電せる       福田葉子
   野に焼いて草に南限木に北限       ふけとしこ
   静かなときの蝶こはい貌          渕上信子
   メーデーや戦後のはてに「マスク欲し」   堀本 吟
   冬ざれの高崎市民ゴルフ場        前北かおる
   仲さんが姫ちやんを飼ふ佐久の雪      松下カロ
   風花や新宿騒乱いまむかし        真矢ひろみ
   花水木いつか天へとさそひあひ      もてきまり
   野遊びの離ればなれに影動く        渡邉美保
   春光おかさにきてこの午下がり       佐藤りえ
   幸せになりさうなほど雪いつぱい      筑紫磐井

  

撮影・鈴木純一「リアルなるものの角張る五月かな」↑ 

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