2021年3月22日月曜日

鳥居真里子「椿一輪からだからああ、出てゆかぬ」(「俳句αあるふぁ」2021春・休刊号より)・・・


 「俳句αあるふぁ」2021春・休刊号(毎日新聞出版)、編集後記によると、「スタート日は未定ですが、4月以降毎日新聞によるウェブサイトからの発信にご期待下さい」とある。本号の主要な特集は「俳句と生きる」、「柿本多映の俳句世界」と、特別企画に「わたしの選んだ2020年の秀句」である。立ち読みでパラパラと捲っていたら、あろうことことか、愚生の句を「『俳句年鑑』2021」の掲載5句から、拾い上げてくれた人がいた。鳥居真里子である。よって取り上げて下さったことへの敬意を込めて、彼女の句をブログタイトルにさせていただいた。先般、亡くなられた青柳志解樹から横澤放川まで45人の俳人が2020年の俳句から自身の句を1句入れて、他に2句、合計3句ずつが掲載され、短いコメントが付されている。これにも敬意を表して、鳥居真里子の選んだ3句とコメントのすべてを以下に挙げておきたい。


   雪花菜(きらず)なれいささか花を葬(おく)りつつ    大井恒行

                           「俳句年鑑」2021

   わが死後の藻の花きつと花のまま             関 朱門

                           「門」8月号

   椿一輪からだからああ、出てゆかぬ           鳥居真里子

                           「俳句αあるふぁ」冬号

  日本古来よりの美〈雪月花〉と永遠に〈切らずなれ〉の意か。藻の花は永劫白い花のまま、彼の世の朱門のまわりを咲き続ける。生還が叶わなった絶唱の一句。「椿一輪」は人間そのものに棲みついている血肉の象徴である。 


 ともあれ、以下には「私が選んだ2020年の秀句」のなかから、愚生好みに偏するかもしれないが、いくつかの句を挙げておこう。 


   マスクして大東京へ立ち向ふ        今瀬剛一

   小さき山いだきて大き山眠る       青柳志解樹

   竹の皮散る機銃掃射や我狙らひ       有馬朗人

   八月の蟬あんな日もこんな日も       伊藤政美

   生き了るときに春ならこの口紅       池田澄子

   こんな日のこんな事情の心太       宇多喜代子

   忘るるなこの五月この肩車         髙柳克弘

   凍蝶や中村哲が野に不在         山下知津子

   ヰルスとはお前か俺か怖(おぞ)や春    高橋睦郎

   悲しきはI can't breathe美智子の忌      蓼蟲

   一ッ火のおほむらさきのいろの闇      黒田杏子

   神の悪戯てふてふもウイルスも       仙田洋子

   麗しき距離(ディスタンス)にて汗を拭く  筑紫磐井

   クラウドに慟哭満てり額の花        対馬康子

   折れ蓮の折れたき方へ折れて空       柿本多映

   手際よく枯れよ今すぐとは言はぬ      中原道夫

   春窮の列に加はりマスク買ふ        能村研三

   万人の命海市に漂へる           山田佳乃

   海の傷もたぬものなし桜貝         檜 紀代 



      芽夢野うのき「警棒にそっとさしだす小判草」↑

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