「頂点」第245号、今や創刊同人のほとんどが冥界同人となってしまった「頂点」が「次世代に繋げる『捲土重来』・『ふたたび頂点』」を掲げて早くも一年が経つという。かつての重厚なる関西前衛派の拠点雑誌だった「頂点」も東京に発行所と編集所を移し、若い新たな同人を迎えてその歩みを着実にしている様子である。時は今、もはや前衛も伝統もなく、ほとんど錆びついてしまっている俳句形式に対して、いまだその志を持しているだけでも奇貨というべきかもしれない。その特集が「俳句と何か?(6)」で、渋川京子「固有時を語る 今の一瞬がすべて」と「固有時を語る」渡邉樹音である。その渋川京子は、
年齢を重ねてきたことで、はじめて味わえるこの解放感は言葉では一寸説明できないのが不思議である。七十歳台までは何が何でも必死に俳句と向き合ってきた、という実感があった。ところが八十歳を超えてから何となくその必死感の質が変わってきたことに気づきはじめている。『俳句の方から近づいてくる』感じがしている。
自分のために俳句を書いている。この実感がひしひしと伝わってくるのである。長生きをしたい訳ではないが、俳句を続けるためには生きなければならないだろう、という願望も湧いてくる。若い頃には想像もしなかった感情であった。
と記している。生きることは俳句を作ることであり、俳句を作ることは生きることである、というのである。それも自在に・・・。
ともあれ、以下に本号からの一人一句を以下に挙げておこう。
靑枯れし少年のまま「気を付け」 川名つぎお
生身魂生きる証の箸洗う 塩谷美津子
ロボットとわれとのコラボ震災忌 廣田義善保
あめんぼの集まってくるぼんの窪 岡 典子
核兵器封じ込めたき花氷 髙橋保博
蚊遣り下げ松江堀川屋形船 辻本東発
生中な情けが仇に走り梅雨 尾家國昭
私にくれたのだ金木犀 上田美絵
しらたまのややをみごもるななかまど 田尻睦子
下り簗欣求浄土の旗を立て 小林 実
敬老の日や窓の風ひとり分 渋川京子
虫の音の日毎に細る九月尽 近藤健司
ミサイル報にも百足にも慣れて来る 水口圭子
ひらくとき狂気を兆す水中花 杉田 桂
椋の群一樹の影を太らせる 渡邉樹音
冬旱母はずけずけ言う機械 成宮 颯
野菊いま思考回路を整える 森須 蘭
昨年4月に義母他界のため年賀の挨拶は失礼いたします。
昨年中は色々お世話になり、有難うございました。変わらず本年もよろしくお願いします。
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