2018年1月24日水曜日

椎名陽子「歌うたび白雨はげしく反戦歌」(「夢座」177号)・・




  「夢座」第177号(俳句同人誌夢座東京事務局)は、昨年八月二十七日に亡くなった「夢座」創立者の椎名陽子追悼特集である。巻頭エッセイの齋藤愼爾「子規生誕一五〇年の事件簿ー宮坂静生探偵登場」と愚生の「夢座」前号句評「俳句を書くということ」以外は、椎名陽子を悼む記事で満たされている。城名景琳「薔薇」も「私にとって、陽子さんとの関係は、母のようでもなく、姉とも違い、同人の俳人として一緒にお供させていただたと言える」と述べている。江里昭彦「美しきもの見し人はー追悼椎名陽子さん」は椎名陽子句集『風は緑』の序文と同人誌「鬣」の書評、そして、その折々の書簡を交えながら敬愛の気持ちが伝わる悼みの文である。
 また、なかでも、新宿・紀伊国屋書店ビルの地下・カレーの店「ニューながい」での「夢座」の誕生に深くかかわった森英利「椎名さんを悼む」には、その顛末と現在までの道行がよくしるされている。その結びは、

  椎名陽子さんは「夢座」を立ち上げ、市川さんと一緒に、一直線で店の運営と俳句に打ち込んだ。しかしもし、ぼくが「夢座」の提案などをしなければ、もっと穏やかな人生を送っておられたのではないかと思うと、悔恨が残る。

  ふるさとを出で浮雲の平泳ぎ   陽子
  飛行機雲に紛れ一蝶帰らざる   〃
  ひとり又ひとり旅立つ心太    〃

 ニ〇一〇年二月二十日。最後の句会、椎名さんの二句

  ふくらはぎつる冬眠の蟇      陽子
  カテドラルにも柚子湯母の忌くれる 〃

 陽子さんありがとう。また会おう。

と哀惜している。本号はさらに、市川恂々、椎名陽子が参加した、約10年前に行った福井県越前市・卯立の工芸館と翌年に東京南青山「ふくい南青山291」での「日と月によせて●二十四節気ー墨と俳句のインスタレーション」ー上田みゆき×俳句仲間✖音あわーでの 即興の書と句と音のコラボレーションが写真で再掲載されているのは、ひときわ想い出深い。
 ともあれ、同誌本号より一人一句を以下に挙げておこう。

   でこぼこの虹です妻をラッピング    佐藤榮市
   皮膚を搔く手でスルメを裂く      照井三余
   手袋の片手の嗚咽生垣に        江良純雄
   満月の行く手見事な中二階      鴨川らーら
   他人でもなし本人の初鏡        城名景琳
   監獄の独房の瑕窓の雪         金田 洌
   寒禽を植物園の奥に聞く        太田 薫
   体内の水騒ぎだす夜の地震       渡邉樹音
   すすき原ショパンのキイが奔っていく  森 英利
   障子から玻璃をさまよう冬の蠅     銀 畑二



          撮影・葛城綾呂↑
   







    

  

  




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