2018年1月12日金曜日
広瀬ちえみ「暗くなる不思議な音を立てながら」(「垂人」32号)・・
「垂人(たると)」32号(編集、発行 中西ひろ美・広瀬ちえみ)、特集は川上研治第二句集『ぴあにしも』、ならびに、垂人連句会百韻「残暑こそ」。鈴木純一「『残暑こそ』の巻、留書 『百韻入門』」によると、もともとは「浅沼璞師が『たまには自分も捌かれたい』」というので、璞創始の「オン座六句」のつもりが、璞師入院の報に中止と思いきや、中西ひろ美の「中止しないわ。雀羅さんが捌きだから」とあいなった。で、オン座六句でもなく、歌仙でもなく、どうせやるなら百韻となったらしい。以下に百韻の表八句のみだが紹介しておこう。
垂人連句会百韻「残暑こそ」
残暑こそよけれ翁の加辺カレー 雀羅
銀のスプーンを睨む蜻蛉 純一
旧友に笠の大きなきのこゐて 粗濫
ひとの替はりし秋風の部屋 ひろ美
いつまでも月の出を待つ猫二匹 舞
暮れる港に水輪ひろがる 信明
無人島長いまつげの生えてをり ちえみ
蔓にからまる炎天の蔓 美
平成二十九年八月二十三日 首尾
青梅市河辺「夕㒵亭」
その留書には、捌きについて、
佛淵雀羅(ほとけぶちじゃくら)さんは俳諧師だ。いや連歌師かも。この五月、川崎の繁華街で「笠着」をしたそうだ。通りすがりの人が、笠も脱がず、立ったまま句を付けて行くーだから笠着連歌(かさぎれんが)、室町の頃の話である。この人、中世人か。私が初めて連句と出合った時の捌も、雀羅師であった。
と紹介している。「垂人」の中西ひろ美と出合ったのはもうずいぶん昔のことになるが、たぶん、渋谷の今は亡き多賀芳子宅の句会ではなかったろうか。その頃は、永田耕衣最晩年の「琴座」同人だったように思う。その後その師系の「らん」に所属、今は「垂人」を広瀬ちえみとともに発行している。俳句に対する情熱、探求心と実践力は愚生の到底及ぶところではない。ともあれ、今号の一人一句を挙げておこう。
ショートカットの友に似ている麦の穂は 髙橋かづき
ふかふかのふるさとの山穴まどひ ますだかも
でこぼこの虹です妻をラッピング 佐藤榮市
白薔薇戊夜(ぼや)供花となり我をみつむ 渡辺信明
おおぜいの忌が三月に来てゆらす 中西ひろ美
秋冷の迦楼羅の鼻も褪せにけり 川村研治
川砂が
海砂戀ふる
日和にて 鈴木純一
水中花この世はだめだ来世に期待 中内火星
標本になってしまったつまんない 広瀬ちえみ
朝顔の蔓は暗渠を折り返す 野口 裕
他にも、野口裕は短歌十首、佐藤榮市は詩一編を寄せている。
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