2018年1月29日月曜日
武藤紀子「金泥に舟を描きぬ水ぬるむ」(「自句自解ベスト100』)・・
『シリーズ自句自解ベスト100 武藤紀子』(ふらんす堂)、ブログタイトルにした句「金泥に舟を描きぬ水ぬるむ」には、以下の自解が付されている。
ある人に、「水ぬるむ」は舟とつき過ぎるのではないかと言われた。たしかに以前の私なら「春の雪」とかつけたかもしれない。しかし今は、金泥の「泥」の字があるかぎり、絶対「水ぬるむ」だと思っている。
句作の秘密をみるようだが、たしかに「春の雪」ではボケてしまう。「水ぬるむ」の斡旋が作者としての見せ所なのだ。
今日届いた「現代俳句」2月号の「現代俳句協会70周年記念行事特集」に武藤紀子は次のようにしたためている。
私は宇佐美魚目の弟子で、魚目先生に現俳協に入れて貰った。二十年以上も昔の話だ。ところが先生はおつき合いが不得手で、地元の現俳協の会にもほんとんど参加されない。(中略)
六年前「円座」を創刊主宰となった時、心を入れかえた。もっと現俳協に関わろうと考え、東海地区の会に積極的に参加するようになった。「現俳協の句というのはない。個人の句があるだけだ」と言われ、目から鱗が落ちた。
そうなのだ。奇しくも筑紫磐井が現俳協の本質は、寺井谷子の言ったように「個と自由」にある。「個と自由」こそが現俳協に相応しいと、具眼の見識を示していた。愚生は、筆を抑えたものの、記念式典行事については批判的に書いた。70周年記念行事のあまりに晴朗な有り様は、まことに、現俳協にとっては70年周年以後こそが問われているのだ、と考えさせられた。もちろん、再生のために老身の微力をつくしてもいいと思っているのだが・・・ 。
ともあれ、本書からいくつかの句を挙げておきたい。
存在(ザイン)としての灰色の鶯を 紀子
木の葉髪シベリアのこと少しいふ
青き馬たづさへて年歩み去る
天牛に神さびし顔寄せにけり
雪形の鳥の命を惜しみけり
雀より少し大きく更衣
万太郎の寒の蜆のやうな文字
桜貝打ち上げて波帰らざる
武藤紀子(むとう・のりこ)昭和24年、石川県生まれ。
撮影・葛城綾呂↑
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