2018年1月13日土曜日
伊藤眠「短手(しのびで)の影をくらぶる冬日かな」(『水の音楽』)・・
伊藤眠第三句集『水の音楽』(文學の森)、帯に、大木あまりは次のように記している。
海の日や走り出したき「赤い靴」
伊藤眠さんは、句集を編むたびに変貌を遂げてきた。第三句集『水の音楽』は、虚実の間を自在に行き来する句をはじめ。俳味の良さのある句やウイットに富んだ句など実に多彩である。
俳句という赤い靴を履いてしまった眠さんは、これからも理想の俳句を追い求め続けていくだろう。それは俳句を愛してしまった者の宿命だから・・・。
そして、虚実?の間を恋の句が行き来する。
着ぐるみで語る恋なりカーニバル 眠
片恋に倦みし漢や祭鱧
夜の秋の愛哀相藍みなハズレ
求婚はまたに土用の鰻かな
赤カンナ黄カンナ恋の終らざる
ふくと汁失恋の身を熱くして
果たされぬ約束のごと冬の虹
懐かしき恋のことなど寒稽古
初詣恋愛選手権始む
松納までの恋なり砂利踏んで
伊藤眠と最初に会ったのは、これも前日のブログに書いた中西ひろ美と一緒で、渋谷のオニババこと、今は亡き多賀芳子宅の句会ではなかったろうか(随分むかしのことだから、茫洋としているが)。
その他、愚生好みの句をいくつか挙げておこう。
千本のさらに奥へと花の冷
辛子和しか思ひつかぬよ花菜
姿より先に声あり帰省の子
出身は地球と応へ星まつり
身になじむ天動説や秋の夜
年の夜や星に寿命のある不思議
伊藤眠(いとう・みん) 1956年、横浜市生まれ。個人誌「雲」を発行し続けている。
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