2018年1月22日月曜日

豊口陽子「皆既食蛇(み)は海原に髪ひらく」(「LOTUS」第37号)・・



 「LOTUS」第37号(発行人・酒巻英一郎)は、特集1が『言霊の宮へー豊口陽子の世界」だ。編集後記のなかに「豊口は現在、不調により俳句活動がこ困難な状況にある。今回の特集は、そうした意味で豊口陽子俳句世界の探訪と同時に、豊口の恢復と俳句復帰をつよく念願したものもの」と記されている。
 主な内容は、「豊口陽子四百句(志賀康・酒巻英一郎・三枝桂子・九堂夜想 選)、三枝桂子による豊口陽子インタビュー、豊口陽子論は、江田浩司、青山茂根、古田嘉彦、高橋比呂子、志賀康、表健太郎。一句鑑賞は、同人外からは今泉康弘、上田玄、岡田恵子、高野公一、松下カロ、山本敏倖、同人だが、先般亡くなった吉村毬子などを含む18名。ほぼ豊口陽子の全容を知ることが出来る。
 インタビューは、4年前の春に行われていたという。その中で以下のように語っている部分がある。
   
  そもそも、その句が自分の中から発生した時は、それは天から降ってきたのか、地面から生えてきたのか、という感じなんですね。スタイルが決まってしまったらもうお終いじゃなおですか。もし俳句が「五七五で季語が入っていればそれでいいのよ」っていうものだとしたら・・・それが形式だとしたら、形式というのは死体を見ているようなものですよね。 
  


           「資料編」豊口陽子全句↑

 また、今回の特集を実現させるための『「資料編」豊口陽子全句』が酒巻英一郎の手によってテキスト化され、先に配布されていた(写真上)。この資料編は豊口陽子の既刊各句集『花象』、『睡蓮宮』、『藪姫』、「LOTUS]誌掲載全句、-句集『藪姫』以後、さらに編集覚書には解題、略年譜に相当する酒巻英一郎の解説、安井浩司の序文などを収録し、文字通り『豊口陽子全句集』になっているものである。同人諸氏の豊口陽子への敬愛と恢復を祈念する熱情が生んだ特集である。以下にいくつかの句を拾って紹介しておきたい。

  秋蝉の死に惜しみたる日射しかな     『花象』1986年刊
  れんげ摘む母と異る血を殖やし
  口笛や一山のへび棒立ちに
  ひばりよひばりワイングラスを毀してよ  『睡蓮宮』1992年刊 
  水底の春よ詩人はP(リン)である
  〈その蝶〉の瑠璃は煎じて呑まれけり
  巓(いただき)や葛に巻きつく道現れて
  穭田に棲む語のほかは抜きとらる     『藪姫』2005年刊
  元始(はじめ)の零とおわりの0の初夜来る
     「安井浩司全句集」成る
  ヴァイオリンも遂げたる天地返しの藪へ
      悼高屋窓秋氏
  死が渉る去年の月雪あらたまの花
      悼三橋敏雄氏
  眼の奥の冬浪を聴く馬上杯
      悼 大岡頌司氏
  どのごおとんか藁の仮面を岸へ繋ぎ 「LOTUS」掲載句「句集」藪姫以後
  浦の葉を三つ編みにして鳥乙女
  草坐りして風のかけらを糸つなぎ
  天門や素数はひらきつつ蓮へ

豊口陽子(とよぐち・ようこ)、1938年、東京生まれ。




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