「円錐」第81号は「第3回円錐新鋭作品賞発表」である。花車賞(澤好摩推薦)に神山刻「シェフを呼ぶ」、白桃賞(山田耕司推薦)に西生ゆかり「青い万年筆の家」、そして特別賞(円錐編集部推薦)に中山奈々「七七日」。神山刻「シェフを呼ぶ」には、澤好摩、山田耕司の双方の推薦票が入っているので、順当ならば、新鋭作品賞受賞の一名受賞となるはずだが、これまでもそれぞれの選考委員の推薦に授賞してきた経過があるので、それに倣ったのかもしれない。注目は中山奈々「七七日」が、先日、本ブログでも紹介したように、復本鬼ヶ城が提唱し、数年の実験を重ね、かつ実行者がいる「短俳句」と呼ばれる、いわゆる十四音(七・七)の「短句」形式の実践であろう。それを「豈」の渕上信子は、「連句の短句に季語と切れを入れて、平句を発句化することで、世界最短の定形を目指しています」と言っていたが、ここにも実践者がいたので、愚生は少し驚いている。俳句形式は、現在もなお、まだ過渡の詩なのである。残念ながら、応募作全句の掲載ではなく、10句のみであるので、その中から以下にいくつか紹介し、他の受賞者の一句も挙げておこう。
紋白蝶の腹嗅ぐ旅路 中山奈々(特別賞)
魞挿すひとのあとから渡る
盗られしものをみな夜濯ぎす
尿意強める鵙の一声
月映るまで鏡を傾ぐ
溶けぬバター溶けたバターに浮いて春 神山 刻(花車賞)
たんぽぽや地球征服したら暇 西生ゆかり(白桃賞)
その他、各同人より一人一句を挙げておきたい。
七草や歳月人をみがきをり 丸喜久枝
テーブルの眼鏡が見ゐる花吹雪 小林幹彦
波止(はと)は
待(ま)つ場(ば)と
終日(ひねもす)
沖(おき)は荒(あら)き波(なみ) 横山康夫
地虫出づ人は乗るべきバスを待ち 山﨑浩一郎
仮面では隠せぬ涙カーニバル 栗林 浩
雛納む仕丁(しちやう)の喜怒哀楽も 田中位和子
山眠り日はうすうすとかくれんぼ 荒井みづえ
サイレンに倦みたる都市や花の昼 後藤秀治
師の虎の唸るを聞けり初枕 江川一枝
小春日の平凡に過ぐ至福かな 小倉 紫
あまねくものにてのひらはあり龍の玉 大和まな
切通しの左右の冷気春の空 橋本七尾子
落鳥やでんして戻る冬の橋 矢上新八
うぐひす餅と言ふ大きさの変はりなき 原田もと子
老梅や墓場に尽きる道ありて 澤 好摩
あの山に父母の骨ある春の霜 味元昭次
昭和四年生まれの髙橋龍さん平成三十一年一月二十日に逝く
己巳(きし)の年世界恐慌龍の玉 三輪たけし
うぐひすや破り捨てたる一・二月 山田耕司
轢死ありこの御降りの片隅に 今泉康弘
眷属の揃はぬ御代や地虫出づ 和久井幹雄
本村夫妻と右端が愚生↑
★閑話休題・・日本太極拳法一楽庵創立五十周年記念全国大会・・・
昨日、5月3日(金・祝)、横浜文化体育館に於いて、日本太極拳法一楽庵創立五十周年記念全国大会が行われた。偶然というも、あるいは奇縁というも、これほどのことはさしてあることではない。上掲写真中央は本村充夫妻は、愚生がかつて地域合同労組の役員をやっていた時代の仲間であり、かつ愚生が定年退職して2ヶ月ほど、彼の主宰する太極拳法一空会(於:八王子労政会館)で、ごくごく基礎的な太極拳法を教わった師である。その拳法のルーツが同じ、一楽庵初代宗家(現在92歳)・出井現兵子であろうとは思いもしなかった。本村充と会ったのも10年ぶりのことである。
その一空会では、24式や形意拳のほんの片鱗をごく短い期間に学んだ(とは言い難い程度のことである)。それから生活のために、愚生は文學の森に再就職したり、稽古場が住居地と離れていたこともあり、一空会を辞めてしまったのである。
そして3年前、府中グリーンプラザで行われていた、太極拳法の案内に魅せられ、愚生のような年寄りにも出来るだろうと思って入会したのが府中一楽会だったのだ。その師が出井現兵子であり、師の直々の支部だったのである。師はすでに90歳近くにもかかわず、身体の硬い愚生などは及ぶべくもなく、身体も柔らかいし、じつに好奇心の旺盛な先生だった。大会の最後は二代目宗家となられた出井円美子(いずい・えんびし)の「純陰陽剣」での演舞で、本村充は「一楽節祝棍(いちらくいわいこん)」というオリジナル演舞であった。
愚生は、まだ扇も棍も剣もいまだ手にするほど上達してはいないが、健康のためと思ってはじめたので、のんびり、ゆっくりと続けて行きたいと思っている。
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