親泊ちゅうしん句集『アイビーんすかい』(アローブックス)、栞文「句集『アイビーんすかい』に寄せて」は、池原えりこ「消えたものの影」、池宮照子「ちゅうしんさんの一人遊び」、岸本マチ子「影のように沁みる」、のとみな子「へんてこ」、宮城正勝「親泊ちゅうしん俳句の特徴」、高嶺剛「アイビーんすかいについて」。装画の水彩画はローゼル川田。俳号・親泊ちゅうしんはローゼル川田のことである。
帯の惹句には、
言葉は絵になって過ぎ去る
ふとした身体感に消えない後味がのこる
言葉で終わらせない空間の感情
とある。栞文の宮城正勝はその中で、
今度、親泊ちゅうしんの俳句をまとめて読んで気づいたことは、、「切れ」がほとんどないということ。この句集に収められた一六〇句のうち、「切れ」があるのは三句(「や」が二句、「かな」が一句)だ。もうひとつの特徴は口語俳句であるということである。(中略)
もちろん一句のなかに文語がまじっているのもあるが、それは音数を整えるためか無意識に混じってしまったのではないかと思われる。
と述べている。また、本人に便りには、
2008年から2018年までの10年間にわたり、仕事や連載のすき間で作句してきました。
すき間が一枚のパッチワークの感じになりましたので句集を上梓しました。
沖縄の両新聞に月1回、約8年間にわたり、「琉球風画 今はいにしえ」のタイトルで水彩画&エッセイを連載しています。
160句の俳句のすき間に16点の水彩画をレイアウトしました。俳句のための水彩画ではなく水彩画のための俳句でもありません。寄り添ったり気分転換の要素になりました。
とあった。また、集名については、著者「あとがき」に、
句集のタイトルは「アイビーんすかい」です。アイビー(蔦)の箱に棲みついた実感と、若葉に包まれたり落葉した迷路のような裸の蔦にしばられたり、季節はくり返しているようでくり返してないようで時間もくり返すことはありません。アイビーの隙間から覗き見上げる空(スカイ)と合体する造語になりました。ゆたしくうにげーさびら。
と記されている。ローゼル川田には詩集『廃墟の風』(あすら舎)もある。
バックミラーにきみの顔やらさくらやら(右ページ)↑
道を掘る長虹堤が見えるまで(左ページ)
水彩画・ローゼル川田 ↑
ともあれ、以下にいくつかの句を挙げておこう。
花でいご家族の墓は基地の中 ちゅうしん
頭蓋骨曳いて遊んだ夏休み
語り部は少女のままで慰霊の日
茗荷掘る姉の景色も箱詰めに
トウモロコシアツアツアマイハーモニカ
幻想の泳ぐ岸辺に花万朶 (吉本隆明 追悼)
初めての折り鶴つくり火葬する
オオゴマダラはたひた飛んで無彩色
動かない路地を曲がった春の風
口紅がはに出してきたお母さん
落ち薔薇を踏みつぶしてはふり返る
親泊ちゅうしん(おやどまり・ちゅうしん) 団塊世代、那覇市生まれ。
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