2018年8月11日土曜日

石原百合子「熱帯夜『いいね』五万のツイートや」(「円錐」第78号より)・・



 「円錐」第78号は第二回円錐新鋭作品賞の発表である。各選者のそれじれの推薦賞となっている。加えて各選者の推薦句受賞者の各5句が3名ずつ、計9名が掲載されている。愚生の「豈」においての第4回攝津幸彦記念賞も愚生を含め選者三名の選が割れて、唯一重なっていた作者がいたものの最優秀賞は授賞なしにした。そして各人に優秀賞を授賞し、かつ若手推薦賞(攝津記念賞には年齢制限がないため)を決めた。たぶん円錐新鋭作品賞においても応募者の多彩さ、それぞれの表現の水準が拮抗していたということなのであろう。
 円錐新鋭作品賞は賞の名にそれぞれ選者の冠名がついている。因みに、花車賞(澤好摩推薦)、白桃賞(山田耕司推薦)、夢前賞(樋口由紀子推薦)である。以下に各人の一句を紹介しておこう。

  絵日傘に一礼かへす白日傘     石原百合子(花車賞)
  後方にきのふの月の光かな      高梨 章(白桃賞)
  撮るほどの虹ではなくて見てしまふ  大塚 凱(夢前賞)

以下は円錐同人より一句、
 
  ときめきしものにぬりゑの赤い国   後藤秀治
  尻取りの句は散り散りに長岡忌   三輪たけし
  手鏡の化粧直しや目借時       小倉 紫
  わたつみや柩の舟に骨の櫂      今泉康弘
  はかりなきことのあはひに雪月花   栗林 浩
  一匹の淋しき蠅や青嵐        江川一枝
  花筏風の船頭機嫌よし       田中位和子
  唸り凧見えぬ高さの糸を引く     丸喜久枝
  買物の最後にうぐひす餅を買ふ   原田もと子
  野遊びの翁の白衣しめりけり    荒井みづえ
  福助にひねもす降れりそは亡母か   横山康夫
  麦の秋母背負ひたるおぼえなく    大和まな
  火の国の青年如何に夏薊       味元昭次
  夏虫の跳ねそこねしは歩みつつ    山田耕司
  数輪の梅花藻を水うねり過ぐ     澤 好摩
  くたぶれた女の胡坐夏に入る     矢上新八
  踏込めば廻廊鳴ける万愚節     山﨑浩一郎
  たかんなの煮炊きは淡し斎皇女(いつきみこ) 和久井幹雄
  水瓶を庭に持ち出す季節が変る   橋本七尾子
  階段の鴨の緑の立ち残る      宮﨑莉々香



          撮影・葛城綾呂 アゲハの羽化↑


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