2022年12月29日木曜日

渡邉樹音「色褪せて聖樹は眠る月の昼」(第44回・メール×郵便切手「ことごと句会」)・・


  第44回・(メール×郵便切手)「ことごと句会」(12月17日付け)、兼題は「戻」+雑詠3句。以下に一人一句と、寸評を紹介しておこう。


  我が母の戦後の日々や冬菜なり      武藤 幹

  停車位置を百粍戻す冬の電車       金田一剛

  羊水に戻ってしまう日向ぼこ       江良純雄

  冬夕焼巻き戻しても違う色        渡邉樹音

  枇杷の花こんがらがって寂しくて    らふ亜沙弥

  警笛掠れ冬の工夫等立ち上がる      渡辺信子

  寒茜富士の裾野に隠れけり        照井三余

  大雪の二日三晩の街あかり        杦森松一

  ここよりは行けない冬の戻り橋      大井恒行


★寸評・・・

・「色褪せて聖樹は眠る月の昼」ー頼りない昼の月に観る聖樹を色褪せと詠む俳ならでは(三余)。ウクライナの街々。停電の中のクリスマスツリー。それでも子供たちは明るく喜んでいた。「月の昼」が良い(幹)。褪せた緑、月影の白、そして辺りは無音。冬の水彩画を見るような(信子)。

・「我が母の・・」ー「冬菜」にもう少し、キチンとした名のものが斡旋されていたら、もっと良かったのに。「冬菜」ではどうしても、比喩的に読めてしまうのが惜しい(恒行)。

「停車位置を・・」ー「を」か「の」のどちらかを削るとリズムが整うような・・(信子)

・「羊水に・・」ーたしかに日向ぼこの温みはそうかもしれないが・・(恒行)

「冬夕焼・・」ー中句・下句の「巻き戻しても違う色」が良い。一瞬の、その場限りの美しさ・・(幹)。

「枇杷の花・・」ー亜沙弥さんの「花詠み句」はいつも素敵です。観察眼も鋭くアイロニーもある。「勝手に年度賞」なら一連の亜沙弥さんの花詠み句です(剛)。

「警笛掠れ・・」ー句における光景がよく描かれていて、他の作品がけっこう感懐的、空想的であったのに比して、リアリズムの良さがあった(恒行)。

・「寒茜・・」ー何気ない光景。そこを切り取って見せたところ、富士の大きさが見える(恒行)。

・「大雪の・・」ー下五「街あかり」は雪明かりに違いないとおもうのだが・・、強いて言えば二日、三晩に時間の経過がある(恒行)。

「ここよりは・・」ー戻り橋は京都の伝説の橋のことでしょうか。歴史を感じ、足が止まります(松一)。





★閑話休題・・「Nostlgia 岡田博追悼」(ワイズ出版)・・・


         


挟込まれた挨拶状の中に、


 昨年亡くなりました「株式会社ボアール」「ワイズ出版」創業者・岡田博を偲ぶ『ワイズ出版展”Nostlgia”』にご参加いただきましたこと、心より感謝申し上げます。(中略)

 尚、遅くなりましたが”Nostalgia”展の前後で、皆様からいただきました沢山のお言葉をお纏めした文集が完成いたしました。(中略)

                                令和四年十二月

                   有限会社ワイズ出版・株式会社ボアール一同


 とあった。写真もふんだんにあり、便りを寄せた方々、愚生のは、本ブログからの転載だが、総勢、70余名に及ぶ。年譜もあり、その亡くなる年、2021年3月「日本映画ペンクラブ賞 奨励賞」受賞とあり、また、同年10月11日「新文芸坐にて『追悼・岡田博 銀幕に刻まれた映画への想い開催される』(第一回制作作品『無頼平野』を上映)」とあったのには、すこし救われた気がした。じつは、この映画と、第二作「樹の上の草魚」(石川淳志監督)に、愚生はエキストラで出演させられている。ともあれ、ご冥福を祈る。

 岡田博(おかだ・ひろし)、小倉市(現・北九州市)生まれ。2020年8月27日死去、享年72。


    尽忠の映画の海に逝かしめき    恒行 



           芽夢野うのき「煤逃げの男は蒼き葱畑」↑

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