小池正博第3句集『海亀のテント』(書肆侃侃房)、そのシンプルな「あとがき」を紹介する。
『水牛の余波』『転校生は蟻まみれ』に続き、『海亀のテント』をまとめた。二〇一六年から二〇二二年までの七年間の作品である。これで動物三部作が完結する。航海を終えて寄港した船底にはフジツボの類が付着していることだろう。
ルサンチマンや事故模倣、川柳的技術などに混じって、やっかいなのは虚無感だ。句集を出すことで洗浄できれば嬉しい。
とある。集名に因む句は、
海亀のテントめざして来てください 正博
であろう。ともあれ、門外漢ながら、愚生好みの句をいくつか挙げておきたい。
酔うたびに街を消してもいられない
入口に鳥 出口には鳥もどき
褒められたときには顔を取り換える
譲りあいながら音量が消えてゆく
黄泉の河いっしょに遊んでくださるのよ
逢いたいが虫の種類がわからない
データには不慮の出会いも入れておく
屋根に草生やしておけば暖かい
空白を曳けば山鉾動き出す
二人とも同じ匂いのする仮面
この町の数えきれない避雷針
肉食であれ草食であれぷよぷよ
小池正博(こいけ・まさひろ)1954年生まれ。
★閑話休題・・小池正博「身長を比べあう同姓同名のペンギン」(「川柳スパイラル」第16号より)・・
小池正博つながりで「川柳スパイラル」第16号(編集発行人・小池正博)。特集は「『川柳スパイラル』創刊5周年の集い」。「編集後記」の中に、
夏が過ぎ、秋から冬へと向かってゆくが、古いものは落ち、新しい表現が生まれてゆくことだろう。晩秋になるとリルケの「秋」という詩を思い出す。落葉のように私たちはみな落ちるのだが、その頽落を受け止めるやさしい掌があるというのだ。
ともあれ、以下に一人一句を挙げておこう。
編み上げた夜をあなたに渡そうか 清水かおり
とりあえず泣く雨の日のやじろべえ 畑 美樹
インターホンにて所感を述ぶるなかれ 湊 圭伍
赤だしも白だしもいいおとしごろ 一戸涼子
難問を解いた銀杏から落ちる 悠とし子
不死身です丹下左膳もぼくちゃんも 石田柊馬
ヒロヒトの煮る時雨煮に似た寛子 川合大祐
プルタブを引く終わりの始まり 浪越靖政
憲法」を保つ立派な「日本国 飯島章友
あふれつづけるものこぼしつづけて今日 兵頭全郎
撮影・芽夢野うのき「壊れるって最後の積木つんだから」↑
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