「現代俳句」12月号(現代俳句協会)、いつもより、少し厚いなと思ったら、盛沢山の内容だった。巻頭の「直線曲線」は、武良竜彦「表現の深度と強度いうこと」、また力の籠った巻頭評論は井上康明「飯田蛇笏『霊芝』ノート」、それに興味深く、よく実現させたな、と思う黒岩徳将「センバツ!全国高校生即吟俳句選手権 開催報告」。これはセンバツ高校野球選手権に倣っての名称で、略称を「セン俳!」というそうだ。いわゆる本家の「俳句甲子園 全国高校生俳句選手権大会の協力も得てのことで、現代俳句協会青年部の、このところのWebを駆使した実践が実を結んだものらしい。中矢温「セン俳!イベントレポート」、また田中亜美、神野紗希、堀田季何、田島健一、瀬戸優理子、野口る理などの感想も掲載されていて、開催にまつわる熱意が伝わって来る。審査員は俳句甲子園でもおなじみの田中亜美・阪西敦子・堀田季何・高柳克弘・神野紗希、オブザーバー(兼題発表)に中村和弘・高野ムツオ・夏井いつきであった。ちなみに、決勝トーナメントを勝ち抜いたのは、
優勝 弘前高等学校 西野結子「顧問からアロハの柄の葉書くる」
準優勝 星野高等学校 野城知里「八朔や空のあをさに塗る葉書」
三位 松山東高等学校 山根大和「日蝕の刹那は愛に似て葉月」
四位 立教池袋高等学校 藤井万里「秋天に葉脈還りゆく速さ」
五位 八戸高等学校 菅原雅人「葉緑体たゆたう梅雨夕焼の雲」
入賞 洛南高等学校 奥井健太「一言で終はる挨拶猫の恋」(準決勝)
海城高等学校 南 幸祐「片言のフランス語にて林檎買ふ」(〃)
横浜翠嵐高等学校 岡本伊万里「秋澄みて五言律詩を声に出し」(〃)
星野高等学校 田中望結「伝言の重さ八月十五日」(〃)
以下を略すが、それにしても、現役高校生の句作りの際の、歴史的仮名遣いの多さには、少しあきれた。林田紀音夫がかつて言ったように「現代の猥雑さに賭けるために、ぼくは現代仮名遣いで書く」と言った志からは、遠く、言語ゲームの曲面に、安定した情緒に無意識的に、それとなく依拠する心性を有しているというべきなのかもしれない。隔世の感がある。愚生もまた老いたるか、という印象。俳句形式は、常に現代の詩たらんと欲しているように思うのだが・・・。
★閑話休題・・・大井恒行「夕空の美意識にしでこぶし」(「現代俳句年鑑 2021」より)・・・
「現代俳句年鑑 2021」(現代俳句協会)が届いたので、ずうずうしく自己宣伝の
ために、「諸家近詠」(1908名、9295句)の中の5句(タイトルの1句も)を挙げておきたい。
空・草木・海・風のこだまは連帯す 恒行
歩くたび幻像の春残りけり
かたちないものもくずれるないの春
雪花菜(きらず)なれいささか花を葬りつつ
芽夢野うのき「冬蝶のぐるぐるるまわる悟空なり」↑
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