「句歌」第七集(発行 保坂成夫)の内容は、彗星のように輝き、いわゆる俳壇から姿を消して、沈黙を続けている宮入聖の未刊句集『我ハコノ世ノ物ナラズ』(2015・書下ろし・未刊)よりの句と、句集『花のかたち・微光』(平成十三年・未刊』よりの句群と、合わせて、保坂成夫の短歌「水鶏」と日録風の「貧乏ぶろぐ」からなる。この「貧乏ぶろぐ」、日付はたぶん昨年(2019年~)のものであろう。例えば、
十一月十一日 離れればなぜか悲しくそばにいれば早く逃げたい夫の荒れる日 作家内田康夫氏を看取った奥さんの早坂真紀さんの歌。身に沁みる。
十二月十七日 「パッチギ」の沢尻エリカは慶応病院に入院したそうだ。VIPルームは一日二十四万円だそうだが、これは治療費か滞在費か。脳腫瘍で慶応病院に入院したのは1983年の十二月。電卓で計算してみるとあれから37年なんだ!まさか余命三十七年とは思わなかった。
三月十五日 (前略)ギャラップ調査によると、アメリカがスーパー楽観主義なのに対して、日本人はスーパー悲観主義なのだそうだ。加藤(愚生注:諦三)氏の説では、悲観主義とは偽装された攻撃性なのだそうだ。なんだか解るような気がする。
三月二十七日 全国の感染者数は九十六人。死者が五人となった。このレベルで推移するのか、それとも世界並みに増加するのか。
と、今号ではここまでである。新型コロナ感染者数については、まだまだ、楽観的だったことが伺える。わずか半年と少し以前のことなのに・・・。ともあれ、以下に宮入聖と保坂成夫(たぶん、=かつての小海四夏夫)の句と歌を以下に挙げておこう。
春の川はさみじやんけんなどもゆめ 宮入 聖
駄菓子屋へ運をつかいし友いづこ
外風呂へ走る女の先の闇
ぬれてくるかほのしばらく夜の秋
祖父を焼き手ぶらで戻る秋の径
極上の冬日の載りし御座布団
初夢のまだぬれてゐる水彩画
大日のふるへて沈む寒すずめ
目つむれば太陽黒き野に遊ぶ
うぐひすはへたなり去年と同じ春
葉桜や生まるる星と死ぬ星と
あぢさゐは風の卵か雨の子か
ひるがほや日蝕おはりみな狂ふ
納税を済ませて花桐の降る下を父として帰る日もまたあれ 保坂成夫
母が里を眼下に三ツ矢サイダーをここで飲み干すが通過儀式
蜩はゲッと人語を呟きて場所代へてをちかたへ飛び去る
炊飯器のスイッチを押し忘れたることを猫又坂あたりで気付く
秋黴雨のこの日は棘の残りたるアジフライと知りつつも買ふ
撮影・鈴木純一「凩の吹きあましてか今朝の月」↑
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