2020年12月7日月曜日

渡辺信子「人形の肌寒からん夜の玻璃」(第19回「ことどく句会」)・・

 


  第19回・紙上「ことごと句会」(11月21日・土)、雑詠3句+兼題「肌」1句。ことごく句会に於て、渡辺信子は、デビュー戦の初登板以来、3連続最高点を獲得して3連覇を達成。よって次回の兼題出題も渡辺信子。句の総合計獲得の最高点では、渡邉樹音。いずれも女性軍に軍配が上がっている。ともあれ、以下に一人一句を挙げておこう。


   白線より足はみ出さぬ冬帽子      渡邉樹音

   月の出に十一月の白ワイン       照井三余

   冬の蝶売れぬ文士の散歩かな      武藤 幹

   息白く白くざらつく街を行く      江良純雄

   弦月のしんしんと冴ゆオノマトペ    金田一剛

   ノラ堂々枯野に入りてそれっきり    渡辺信子

   一六や白磁の肌理に寒の冴え      大井恒行


 それぞれ、寸評が付されているので、その中から、

〇渡辺信子「人形の肌寒からん夜の玻璃」ー「過不足の無い表現、詠みぶりで佳し。「ノラ堂々枯野・・・」の句と合わせて、イプセンの『人形の家』かも知れない(恒行)。

〇渡邉樹音「白線より・・・」-動きが鈍いのか、気が弱いのか?日本人の喝かもしれない(純雄)

〇照井三余「月の出に・・・」-透き通ったおしゃれ(信子)。

〇武藤幹「冬蝶の売れぬ文士・・・」ー儚げな風情がそうだと思います(樹音)。

〇江良純雄「息白く・・・」-コロナは抜きに独立している街の喧騒(三余)。

〇金田一剛「弦月の・・・」-オノマトペの神髄か。写生の内の本質。本質の内の写生 (幹)。

〇大井恒行「一六や・・・」-一六ときましたか。不思議なバランス(樹音)。

〇金田一剛「この相撲一番にて千秋楽」-自句自戒=十七音でなりたち、季語(相撲)もあるが、これを俳句とはいわない。4枠しかないのにこんなジョー句を載せるとは、もったいない。分かってます・・・(剛)




★閑話休題・・・訃報あり。有馬朗人「光堂より一筋の雪解水」・・・

 本日7日、午前、自宅で急逝。享年90。120歳まで生きるといつも朗らかに、旅先でも散歩を欠かさずしているとおっしゃっていた。何かの会の始まる前に、学士会館あたりを散歩されているとき、偶然、お会いしたこともある。生前の攝津幸彦は朗人(ろうじん)の句はオモロイ、と言っていたことがあった。合掌。


      水中花誰か死ぬかもしれぬ夜も   朗人

      梨の花夜が降る黒い旗のやうに

      滝の上鷹が定める国境

      熱田津に登り春月大いなる


有馬朗人(ありま・あきと) 1930年9月13日~2020年12月7日。大阪市生まれ。



       撮影・鈴木純一「箱につめて一つを残す冬林檎」↑

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