2014年1月10日金曜日
いたやちさと句集『八十八夜ー風になった兄へ』・・・
句集名は、
櫂のない風吹く八十八夜かな ちさと
の句から。「はじめに」で、
自己流でノートにすこしづつ書き貯め「五十歳迄に八十八句創って『八十八夜』という題名 で句集を出したい」と表明したら「いいね、頑張りな」って言ってくれた兄。
『さようなら風に掟も櫂もなし』そんな句を残し彼は五十三歳で病死した。
その約束を果たせぬまま時は経ち私は六十歳に近づいてきた。
兄とは長岡裕一郎のことだ。掲出の句は、裕一郎の辞世の句を受けて創られた句である。
長岡裕一郎は08年4月30日に亡くなった。早いもので、もうすぐ没後16年を迎える。
裕一郎のデビューは、1973年、『現代短歌大系』(三一書房)に応募して新人賞次席、たぶん受賞は石井辰彦だったように記憶したが、(愚生は昨年末、断捨離よろしく、本は図書館に依存することにして、この短歌大系全巻も処分してしまったので、いま、確かめられないのが残念・・)。
同年、「俳句研究」第一回五十句競作佳作第一席に入賞した。彼が19歳のときだった。
いたやちさとは長岡裕一郎の実妹。兄との約束を果たされたのだ。
句集は私家版で大とびらの左ページに「長岡裕一郎スケッチ『猫を抱く妹ちさと』」が掲げられている。
句作品のほかには幼時からの思い出のつまった写真と「あとがき」前ページにはちさと作品として自身が制作した絵葉書と羊毛フェルト猫などの写真が配されている。
夢ふたつ枕ひとつの午睡かな
異国にてアカシアの雨飛ばぬ鳩
電話口姉も私も母の声
春一番手紙ポケット抜け出せず
雪あかり開かずの勝どき寂しけれ
ところで、長岡裕一郎にはすぐれた回文作品があることは余り知られていない、「豈」第5号(1892・秋)、「星の汐 一句両吟」と題された回文句を紹介しておこう。
☆昨日より卯も満ち白く花や来し 裕一郎
死期や汝は黒し魑魅魍魎の気☆
☆娶れただし二十八歳ルツ唄ふ
葡萄蔓いさ血は富士にしたたれと☆
ロウバイ↓
最後に彼の多行句も・・・
藤夜叉は
花夜叉に問ふ
瀧夜叉を
メルツィ君
繪は描くものだ
アネモニイ
マンリョウ↓
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