ひさしぶりに御茶ノ水駅に降りた。
坂を少し下ると明治大学のリバテイホールがある。そのなかに入ってすぐの左横が明治大學中央図書館である。そのギャラリーで来る1月19日(日)まで、「本の装い百年ー近代日本にみる装幀表現」展が開催されている(無料)。
明治大学和泉図書館所蔵の「日本近代文庫」から約90点の展示である。
展示の特徴をいえば、現代人ルリユール作品が、原本と並列されていることであろう。
ルリュールとは聞きなれない言葉だが、フランス語reliure=製本ということらしい。
今回の展示は、工芸製本の一線で活躍する約20名の工芸家の手製本。原本をテキストにしながらみずからの工夫をこらした造本を行なっているのである。
例えば、漱石の『草合』『三四郎』(装幀・橋口五葉)に対するのは中村エイコの山羊革装の丸背箱総革装。文字は金箔押しであり、そして、『三四郎』に挑戦しているのは鈴木敬子、和紙くるみ製本、紗の漆貼りという具合・・・。
とはいえ、年月を経て陽に焼け気味の装幀と較べると、どうしてもシンプルでありながらも時間の厚みのある昔の本の方に、より懐かしい感じをもたされるのはいたし方ないのかも知れない。
たしかに気になる装幀というのはある。さしずめ、愚生の青年時代にはランボオ全集の駒井哲郎、活字を中心とした吉岡実、また、文字の多く用いた杉浦康平、独特な書き文字の平野甲賀など、これらはもはや歴史的な書物となり始めているのではなかろうか。
それにしても、泉鏡花『婦系図』の鏑木清方の口絵で鰭崎英明装幀、その口絵の女の鬢の生え際には思わずうっとりとさせられた。
ミツマタ↓
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